住宅設備は「資産」ではない事を理解しましょう

今回のテーマは、住宅設備に対する考え方です。「この設備があるから資産価値が維持できますよ」というセールストークを耳にすることがありますが、本当にそうでしょうか?結論から言えば、住宅設備のほとんどは、資産価値の維持には貢献しません

その理由と、例外的に資産性を保ちやすい設備、そして住宅購入時にどういった要素を重視すべきかについて解説します。

資産価値の維持とは「売却時の価格差」である

まず、不動産における「資産価値の維持」をどう定義するかを明確にしておく必要があります。

私が考える資産価値の維持とは、「購入時の価格と売却時の価格の差が少ないこと」です。

不動産を売却(現金化)した際、買った時と比べてどれだけ価格が落ちていないか、という観点で考えます。この価格差が小さければ維持できた、大きければ維持できなかったということになります。この定義は、単に住み心地や満足度(利用価値)を測るものではなく、金融的な観点、つまり「担保価値」としても重要視される点です。

設備の寿命は短い。だから価値が落ちやすい

住宅設備が資産価値を維持しにくい最大の理由は、寿命が短いからです。

建物の寿命が数十年あるのに対し、給湯器、システムキッチン、エアコン、温水洗浄便座などの設備は、物にもよりますが10年〜15年程度で寿命を迎えます。

仮に最新のハイグレードなユニットバスや、高額なIHクッキングヒーターといった設備を導入したとしても、中古市場では「設備のグレード」として評価される金額はごくわずかです。設置した瞬間からその設備は中古品としての評価になり、その価格は「将来の交換費用」と見なされます。特に太陽光発電システムのような大規模な設備も、機器の保証期間(10年〜15年)が過ぎると、むしろ「将来の撤去費用やメンテナンス費用」というマイナス要素として見られるリスクさえあります。つまり、設備は10年でその価値がほぼゼロ相当になるため、設備の導入費用が高ければ高いほど、10年後の価格差(資産価値の下落)が大きくなることを意味します。

住宅設備は、あくまでも「その方が住んでいる間の快適性を上げるための消耗品(消費財)」として割り切って使うべきであり、資産性というものは考えるべきではないのです。

資産価値を維持するのは「経年劣化しないもの」

では、本当に資産価値を維持しやすいのはどんな要素でしょうか?それは、年月を経ても変わらないものの比率が高いものです。

具体的には、建物の設備や構造ではなく、土地の持つポテンシャルに関わる要素が重要になります。

  1. 立地(特に駅からの距離):10年、20年経っても駅までの距離は変わりません。アクセスが良いことは普遍的な価値です。
  2. 前面道路の広さ:広い道路は開放感や利便性につながり、不変です。
  3. 敷地の面積:土地の広さ自体は変わりません。
  4. そのエリアのブランド価値や地域特性:ブランド価値に加え、行政サービスや評判の良い「公立の学校区(学区)」といった、永続的に変わらない地域特性も、間接的な資産維持要素となります。

この「土地の比率」こそが資産性を考える上で最も重要です。例えば、郊外の一戸建てで土地:建物=50:50のケースと、超高立地のマンションで土地:建物=80:20のケースを比較してみましょう。両者とも建物の価値が20年で半分になった場合、前者は全体の価値が25%下落しますが、後者はわずか10%の下落にとどまります。この差を生むのは、まさに「経年劣化しない土地の持つポテンシャル」であり、これが高い物件ほど資産価値は維持しやすいと言えます。

例外あり!資産価値を維持できる可能性がある設備

原則として設備は資産性を持ちませんが、例外として「後から取り付けが難しい、もしくは不可能な設備」は、その物件ならではの希少性となり、資産価値を維持できる可能性があります。

例1:マンションのディスポーザー

ディスポーザー(生ゴミ処理機)は、各戸が個別に導入できるものではなく、排水処理槽などマンション全体での大規模な共用設備が必要になります。この共用設備は、その存在自体が「高グレードマンション」の証となります。ディスポーザー対応マンションはまだ数が少なく、希少性が高いです。

「ディスポーザーがないマンションには住みたくない」という一定の需要層がいるため、売却時に多少高くてもその層を捕まえることができ、結果として価格差が小さくなる(資産価値を維持できる)ことがあります。ただし、注意点として、ディスポーザーは管理組合による定期的なメンテナンス費用が発生するため、修繕積立金が高くなる傾向にあることも理解しておく必要があります。

例2:ガスの乾燥機を使える環境

ガスの乾燥機(例:乾太くんなど)の魅力は、その圧倒的な乾燥スピードと仕上がりの良さにあります。特に電気式のヒートポンプ乾燥機と比較すると、性能差は歴然で、共働き世帯や子育て世代からの人気が高い設備です。戸建てでもガスの配管を新設するのが困難な場合や、マンションでガス容量が制限されている場合、すでにその環境が整っている物件は、非常に大きな付加価値となります。そのため、中古物件でも「ガスの乾燥機が置けるような間取りと配管がすでに整っている」物件は、それがプラス要素となり、買い手の選択肢に大きく影響を与え、価値が乗ることがあります。

まとめ:設備は快適性、投資は立地に

住宅設備は、住んでいる間の快適性を高めるためのものです。

「資産価値が維持できますから」という怪しいセールストークに惑わされ、不要な設備に高額な費用をかけると、売却時にその金額分が落ちることで結果的に損をしてしまうことになりかねません。

不動産購入に際しては、「立地や土地の広さなど、年月を経ても変わらない要素」を投資と捉え、「設備」は消耗品として快適性を重視する、という割り切りを持って望むことが重要です。

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