戸建てよりマンションの方が資産価値を維持しやすいという意見は本当ですか?

「家を買うなら、将来売ることを考えてマンションにした方が、戸建てよりも資産価値を維持しやすい」—不動産選びの際、このようなアドバイスを耳にすることがあるかもしれません。

実際、私の同業者の中にもこの主張をする人は多くいますが、果たしてこの意見はどこまで正しいのでしょうか?

本記事では、過去の市場動向、資産価値の正しい定義、そして見過ごせない将来的なリスクを踏まえ、このテーマについて深掘りしていきます。

結論:将来のことは誰にも分からない、ただし過去には根拠がある

まず、私個人の見解を先にお伝えすると、「資産価値が未来永劫維持できるかどうかは、誰にも断言できない」というのが正直な結論です。

しかし、「何も考えなくていい」わけではありません。過去の事実を知り、正しい定義で考え、リスクを想定することが重要です。

1. 「資産価値の維持」の正しい定義とは?

この議論で最も大切なのは、定義の明確化です。話す人によって「資産価値」の捉え方が違うため、以下を前提に話を進めます。

  • 資産価値:その不動産を売却(現金化)したときに、いくらになるのかという価格。
  • 資産価値の維持:購入時と売却時の価格差(下落額)が少ないこと。あるいは、売却時に購入時よりも高く売れた場合。

重要なのは、「下落率」ではなく「下落額(金額の差)」で考えるということです。

2. 過去15年でマンションが有利だった理由

「マンションの方が資産価値が維持できた」という過去15年(あるいは20年)の傾向は、データ上、その通りです。多くの不動産会社がこの主張をする根拠もここにあります。

その最大の背景は、不動産価格の高騰にあります。

2013年以降、特にマンション価格は顕著に上昇しました。これは土地や戸建ての価格上昇率を上回るものであり、結果として売却価格が購入価格に近くなる、あるいは上回るケースも多くなりました。

また、マンションは戸建てに比べて「換金性(流動性)」が高い、つまり売りやすいという側面も、資産性評価を高める要因となっています。

過去の背景となった主な要因:

  • 価格高騰: 経済状況と連動し、マンション価格が大きく上昇した。
  • 利便性志向: コロナ禍の一時期を除き、都心回帰や駅近を重視する傾向が続いた。一般的に、マンションは戸建てよりも立地の良い物件が多い。
  • 世帯人数の減少: 1世帯あたりの人数が減り、広すぎる戸建てよりも、適正な広さで利便性の高いマンションの需要が増加した。

3. 注意!資産性を語る際の「間違ったロジック」

マンションの資産性を語る際、根拠として弱い、または定義の誤りがある主張が散見されます。

誤った主張①:今の値段が高いから資産性が高い

「駅近のマンションは高い。だから資産価値が高い」という主張は、購入時の価格差を無視しています。

例えば、駅近マンションが1億円で購入時より1,000万円下がったとしても、郊外マンションが3,000万円で購入時より1,000万円下がった場合、下落額(資産価値の維持)は同じです。現時点での価格の高低だけで資産価値の維持は語れません

誤った主張②:「下落率」が低いから資産性が高い

都心部の物件は土地の比率が高いため、建物劣化による下落分が全体に占める割合(下落率)は低く見えがちです。しかし、前述の通り、資産価値の維持は「下落率」ではなく「下落額」で判断すべきです。

土地の比率が高い物件は下落率が低くなりますが、実際の下落額は郊外の物件と変わらないケースも多く、率で語るのは誤解を招きます。

4. 将来を考える:マンション特有のコントロール不能なリスク

過去の成功体験は将来を保証しません。将来、マンションの資産価値に影響を与える可能性のある、重要なリスクが存在します。

それが、共同住宅ならではの「スラム化」のリスクです。

  • 空き家の増加と管理費滞納: 首都圏でもマンションの空き家は問題化しています。所有者が不明確な空き家が増えると、本来入ってくるはずの管理費や修繕積立金が集まらなくなり、管理組合の財政が悪化します。
  • 修繕の停滞: 財政が悪化すると、必要な大規模修繕が行えなくなり、共用部分が劣化します。
  • モラルとマナーの低下: 管理組合が機能不全に陥ると、マンション内のモラルやマナーが乱れ始めます。
  • 売却不能に: スラム化が進むと、そのマンションに住み続けたい人が減り、気づいた人から売却し始めますが、最終的には売りたくても買い手がつかなくなる可能性があります。

このリスクが厄介なのは、自分がどれだけ気をつけても、他の所有者の状況(空き家や管理費滞納)によってマンション全体がダメージを受け、資産価値が毀損されるという点です。戸建てではほぼ100%コントロールできる部分が、マンションではコントロール不能になるのです。

さらに、多くの人が住んでいるマンションは、戸建てのように簡単に解体して更地にすることも難しく、問題が長期化しやすいという側面もあります。

まとめと不動産選びの視点

マンションは、過去の実績や換金性(流動性)という点では、現在も優位性があるのは間違いありません。しかし、将来的な資産価値の維持という観点では、上記のようなリスクも無視できません。

  • マンションを選ぶ場合:物件の立地や築年数だけでなく、管理組合がきちんと機能しているか、修繕積立金が適切に積み立てられているかなど、「見えない部分」を徹底的に確認することが重要です。
  • 戸建てを選ぶ場合:土地の資産性を重視しつつ、建物のメンテナンス計画や、ライフスタイルに合った立地であるかを総合的に判断しましょう。
  • 「マンション神話」に惑わされず、定義を正しく理解し、過去の傾向と将来のリスクの両方を考慮して、ご自身の不動産選びを進めていただければ幸いです。

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