変動金利はお金がある人向けのローン商品です
住宅ローンは固定金利が良いのか、変動金利が良いのか、という質問はよく聞きます。当社は基本的には固定金利を勧めているのですが、すべての人に固定金利が良いとお話ししている訳でもありません。
世の中の大半の方に対しては固定金利が良いと考えていますが、いくつか条件が合えば、変動金利の方が良いと思える方もいます。端的に言えば、お金に十分余裕がある方は変動金利のメリットを十分に受けられます。この記事ではこの話を少し詳しくお話ししたいと思います。
結局のところは金利上昇のリスクに耐えられるかどうかがポイントです
住宅ローン商品で固定金利が得か、変動金利が得かという質問に対して、まず知らなければならない事は、最終的にどちらが特になるかは誰にも分からないという点です。住宅ローンの返済期間が20年、30年とした場合、20年間、30年間の金利がどのように推移していくかは誰も知りません。
今後金利が上がることは無いとか、金利は大幅に上がるとか、様々な意見がありますが、どの意見もその意見を出している人の予想でしかありません。どんなに信憑性が高そうな話であっても、その意見は単なる予想である、という事をまずは念頭に置く必要があります。
過去10年間は変動金利を組んでいた方の方が得をしたのは間違いありません。恐らく過去20年間を見てもそうでしょう。しかし、だからと言って今後10年間や20年間も同じ状況であるかどうかは誰にも分かりません。
その上で考えるべきことは、金利が何%まで上がった場合に、どのような対処が取れるのか、ローン破綻する可能性はどの位あるのか、という事です。
例えば現在ローン金利を0.5%の変動金利で借りている方が、4%の金利になった場合に返済できるのかどうか、返済できない場合にはどのような対応策を取れるのか、という切り口で考えなければなりません。
簡単に言いますと、金利上昇のリスクに耐えられる人は変動金利を、耐えられない人は固定金利を組む方がリスクが低いという事になります。
住宅ローンの金利上昇のリスクに耐えられる方は2種類です
では、ローンの金利上昇に耐えられる方というのは具体的にどのような方でしょうか。これは、
1.当初のローン返済をしても一定以上の貯蓄ができる位収入が多い方
2.ローン借入金額の何割かにあたる金額を金融資産として持っている方
が、該当します。
1.の収入については分かり易いと思います。試しに2,000万円を30年返済で借り入れしたとしましょう。変動金利で借り入れ当時の金利が0.5%だったとすると、当初の返済額は59,838円、約6万円となります。これがもし、5年後に金利が2%になったとしましょう。その場合の返済額は73,924円となり、14,000円近い金額増となります。
返済されている方は、当初6万円の返済をしつつ、毎月2万円の貯蓄が出来ている方であれば、金利上昇後の貯蓄額は減るものの、支払いができないという事はありません。それだけ収入、厳密に言えば収入ではなく収支なのですが、充分な収支上の余力があれば、金利が上昇しても、余力分は支払いに耐える事が出来ます。
これが10年後に3%になった場合はどうでしょうか。月々の支払いは84,320円になります。当初2万円の貯蓄が出来たものが、貯蓄はゼロになり、更に4,000円強の節約が強いられる事になります。支払いが厳しくはなるものの、まだ何とかなる範囲内と言う気もします。
更にこれが15年後に4%になった場合はどうでしょうか。月々の支払いは95,483円になります。当初の支払いと比べ、貯蓄がゼロどころか毎月15,000円強の持ち出しとなります。なかなか厳しい生活になるかもしれません。
逆に言えば、月に10万円近く住居費にかけられる方であれば、金利が4%近くまで上がっても、貯蓄分が減るだけで、支払いは問題にはならないという事にもなります。このような方は金利4%までの上昇に耐えられる方、という事になります。
2.の現金を持っている方も、実はまあまあいらっしゃいます。現金を持っているのであれば、最初から頭金としてお金を入れて、ローン金額を減らせば良いではないかと考えられるかもしれませんが、低金利の期間であれば借入した方が得というケースもあります。
収入と現金の両方がある方であれば、借り入れを起こすことで住宅ローン減税のメリットを十分に受けつつ、低金利のメリットも得る事が出来ます。そしてもし、金利が一定以上の高金利になった場合には、借入金の残債を現金で払い、月々の支払額を減らすという対処策が取れます。
基本的にこれら2つの条件のどちらか、あるいは両方を持っている方であれば、変動金利を借りるという選択肢があり、かつその方が得をするというケースが生まれやすくなります。身もふたもない言い方ですが、お金を持っている方がお金が掛からずに済むような選択肢が増えるというのが実情です。
変動金利が危険であるかどうかは借りる人の状況によります
言い方は悪いのですが、つまり変動金利はお金持ちの方向けのローンとも言えます。お金が十分あれば、金利上昇に対しての対策も立てられ、金利が上昇しなければ、固定金利のプラン以上に低金利のメリットを受ける事が出来ます。
変動金利のローンは、先行逃げ切り型のローン商品でもあるため、リスクに対して耐性があるのであれば、この先行逃げ切り、つまり残高が大きい時期の金利を安く済ます事ができるというメリットを十分に受ける事ができます。
逆に言えば、お金に余裕が無い方は、固定金利の方がお勧めです。この記事を書いている2017年の年末では全期間固定金利でも1%台の前半というローンがいくつかあります。先程の例のように2,000万円を30年返済として、固定金利が1.3%であれば、月々の支払いは67,121円です。0.5%の変動金利と比べれば、7,000円以上の金額増となりますが、月の返済が7万円を超えると厳しいという方であれば、安全側を見る方が良いのではないかと思います。
ちなみに当社は仲介会社ですので、お客様が変動金利のローンを選んでも固定金利のローンを選んでも、当社の収益上は何の差もありませんし、何の決定権もありません。ですので、情報をお話しした上で、最終的にどのような金利商品を選ぶかはお客様の自由です。
当社では大半の方に対しては固定金利のローンをお勧めしているのですが、実際には変動金利のローンを選ぶ方もいらっしゃいます。情報を把握した上で、どのようなリスクをとるかはお客様が決めるべき事ですので、当社がとやかく言う事はありません。
重要なのは、固定金利や変動金利といったローンがどのような商品なのかを理解した上で選ぶという事だと思っています。
金利が上がれば固定金利に切り替える作戦は恐らく不可能です
金利上昇に対するリスク対策として、金利が上がった際には固定金利に切り替えればよい、と主張される方もいます。これが正しいか間違っているかは、その時の状況次第ですので、これも正確な答えは誰にもわかりません。ただ、今までのローン商品のパターンから推測しますと、この手法はまず無理であろうと私は考えています。
今までのパターンでは、変動金利の金利が上がった場合には、固定金利の金利も一緒に上がっています。そしてほとんどの場合、固定金利の利率は同時期の変動金利の利率よりも高い利率設定になっています。
この記事の執筆時点では変動金利が0.5%近くに対して固定金利は1.3%近くと0.8%程高くなっています。将来の金利設定を正確に予言することはできませんが、仮に変動金利が3.0%の時代であれば固定金利は3.5%前後位の位置にいるのではないでしょうか。少なくとも今の変動金利の利率はもちろん、今の固定金利の利率よりもはるかに高い設定になる事は確実でしょう。仮に金利が3%になると支払いが厳しいという方であれば、変動金利が3%になった時点で、実際にそれ以上安い固定金利商品は同時期にはまずありません。
もちろん将来の話ですからこれも予想の1つではありますが、この予想があたる確率は結構高いと私は考えています。金融機関は基本的に固定金利の商品をあまり売りたがりません。金融機関自身のリスクが高くなるからです。
このお話は細かな話になりますので詳細はお話ししませんが、金融機関オリジナルの固定金利のローン商品は、その大半は金融機関自身がリスクを負った商品だと私は考えています。金利スワップ等の金融工学を使って、リスク回避しているはず、という意見もあるのですが、住宅金融支援機構の金融機関宛調査によりますと、金利スワップを使ってリスク回避をしている金融機関は全体の3割程度で、残りは特にリスクヘッジをしていないというデータもあります。
もちろん他のリスク回避の手法を採っている可能性もゼロではありませんが、恐らくそこまで手が回らないのではないかと思っています。そうなりますと、リスクは金融機関自身が負っているため、そのような商品を、リスクが無い変動金利商品よりも有利な条件で貸し出すとは思えません。そう考えますと、ほとんどの場合は変動金利よりも固定金利のローンの利率は高く設定されていると思われますので、金利上昇期に固定金利に切り替えるという作戦がうまくいくとは思えません。
この辺りの話を詳しく知りたい方は、スワップ取引について詳しい書籍や専門家に確認される事をお勧めします。少なくとも、このような事情を良く知らないまま、金利上昇時には固定金利に切り替えれば良いと、簡単に考えるべきではありません。
裏ワザとして、資産価値が落ちない不動産を買うというリスクヘッジもあるにはあります
金利上昇に対するリスク回避の方法の裏メニューとして、金利が支払いを圧迫する位に高くなった場合には、その不動産を売却してしまうという方法もあります。もっともこれは、住んでいる不動産を手放すわけですし、不動産の売買に関わるコストを考えますと、それ程お勧めという方法ではなく、どちらかと言えば、非常手段と呼ぶべきものだと思います。
その一方で、もしお持ちの不動産が購入した時よりも価格が大きく下がっていないのであれば、ローンの残債以上の価格以上で売れる可能性が高くなるため、売却してしまえばローンを組む前の状態に戻る事ができます。
これが価格が下がってしまう不動産を購入していた場合、ローンの残債が売却価格を上回る事になり、売るに売れない状態となり、ローン破綻してしまう可能性が高くなります。このあたりの話は「居住用の不動産であっても出口戦略を考えるべきです」のページや「不動産は安く買うよりも安く済ます事の方が重要です」のページでもお話ししてます。
しかし繰り返しになりますが、これは非常手段であって、だから変動金利でも大丈夫という話ではありません。資産価値については別に考えるとして、住宅ローンについては、ローン単体で詳しい知識を得た上で、どのローンを選ぶか決める事をお勧めします。
この記事の内容を動画でも説明してみました
このページでお話ししました内容の一部を動画でも解説しています。よろしければ、動画もご確認ください。
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