不動産購入で「古さ」を選ぶのは賢い選択なのでしょうか
不動産の価格を下げる3つの選択肢
不動産は非常に高価な買い物です。予算を抑えたい場合、以下の3つの要素のどれかを妥協する必要があります。
- 遠くする: 都心から離れた物件を選ぶ
- 狭くする: 面積の小さい物件を選ぶ
- 古くする: 築年数の古い物件を選ぶ
このうち、「古くする」という選択肢は、本当に有効なのでしょうか?注意すべきポイントを、戸建てとマンションに分けて解説します。
戸建て住宅の場合:耐震性と断熱性を徹底チェック
1. 耐震性能に注意
戸建て住宅で築年数が古い物件を選ぶ際、最も注意すべきは耐震性能です。
- 1981年以前の「旧耐震」基準: 1981年以前に建てられた建物は、現在の耐震基準に比べて構造的に弱い可能性が高いです。大きな地震で被害を受けるリスクを理解した上で検討する必要があります。
- 2000年基準の前後: 2000年にも建築基準が改正されており、それ以前の建物は現在の基準より緩いため、弱い建物の比率が高い傾向にあります。
- 耐震等級: 近年の建物では「耐震等級3」を取得している物件も増えていますが、築年数が古いほど、耐震等級を取得している物件は少なくなります。
2. 断熱性能に注意
築年数が古い建物は、断熱性能が低い傾向にあります。
- ペアガラスの普及: 窓ガラスがペアガラスになったのは、おおよそ2005年以降と言われています。それ以前の物件はシングルガラスが多く、熱効率が悪い可能性があります。
- 断熱等級: 新しい建物は断熱等級5以上が多いですが、昔の建物は等級4以下、あるいは等級を取得していないものがほとんどです。
3. その他のチェックポイント
- メンテナンス性: 基礎の高さが低い、床下や屋根裏の点検口がないなど、メンテナンスに問題がある物件も少なくありません。シロアリ被害などのリスクも考慮しましょう。
- 価格と性能のバランス: 一般的な戸建て住宅の場合、築年数が古くなると価格は下がりますが、建物価格が約300万円相当まで下がると、それ以上は大きく下がりません。この価格帯の物件は、リフォーム費用などが建物価格に残っていると考えられます。もし、もっと安い物件を見つけても、結局リフォームに300万円以上かかることが多いです。そのため、個人的には、断熱性能が向上した2005年以降の物件を狙うことをおすすめしています。
マンションの場合:修繕積立金と管理体制を重視
1. 性能面は比較的安心
マンションは戸建てに比べて、性能面では比較的リスクが少ないと言えます。
- 耐震性能: 戸建てと異なり、2000年基準の前後による大きな差は少ないため、旧耐震かどうかに着目すれば十分です。
- 断熱性能: 上下左右に他の住戸があるため、戸建てほど外気の影響を受けにくいという特徴があります。窓にインナーサッシを入れるなどの対策で、十分な断熱効果を得られる場合が多いです。
2. 管理体制を徹底チェック
マンションで最も重要なのは、管理体制です。特に以下の点に注意してください。
- 修繕積立金の不足: 築年数の古いマンションは、修繕積立金が不足しているケースがあります。将来必要な大規模修繕が実施できないリスクがないか、長期修繕計画書や管理組合の議事録を必ずチェックしましょう。
- スラム化のリスク: 古いマンションの中には、管理組合が機能しなくなり、住民のモラルやマナーが低下してしまうケースが見られます。ゴミ出しのルールを守らない、共用部分を私物化するなど、住み心地に大きな影響が出る可能性があります。
まとめ:古い物件を選ぶのは「アリ」、ただしリスク管理が必要
「古くする」という選択は、不動産価格を下げる上で有効な手段です。しかし、戸建てであれば耐震性や断熱性、マンションであれば修繕積立金や管理体制など、様々なリスクが潜んでいます。
これらのリスクを正しく理解し、ご自身で判断できる「目」を持つことが非常に重要です。十分に見る目を備えた上で、皆様に合った不動産を選んで頂ければと思います。