建売住宅に関して言われる3つのデメリットとは本当でしょうか
建売住宅は「誰も買わない土地」「災害リスク」「結局損する」は本当でしょうか?
建売住宅(分譲住宅)は、マイホームの選択肢として非常に身近な存在です。しかし、インターネットやSNS上では、建売住宅に対して「立地が悪い」「質が低い」「結局トータルで損をする」といったネガティブな意見や、誤解に基づいた情報も多く見受けられます。
今回は、そうした間違った意見に惑わされることなく、冷静に「何が正しいのか」を判断するための検証を行います。
誤解1:「建売住宅の立地は、誰も買わないような不人気な土地だ」
一部で「建売業者が買うのは、個人が買わない不人気な土地だからだ」という意見がありますが、少なくとも首都圏の不動産取引の現場において、これは逆の傾向にあると感じています。
実際:むしろ良い立地は建売業者がいち早く押さえる
首都圏では、人気の高い好立地の土地ほど、建売業者さんが早い段階で仕入れてしまうケースが少なくありません。
なぜこのような現象が起こるかというと、不動産の仲介会社が「両手取引」を狙うためです。
- 土地の売却時: 仲介会社が建売業者に土地を売却し、業者からも手数料を得る(この時点で両手取引)
- 新築建売の販売時: さらにその仲介会社が、完成した建売住宅の販売時にも買い手を見つけられれば、最初の取引と合わせて「ダブル両手」に近い形で、最大で4倍の売上(手数料)を狙える可能性が
このような経済的な背景があるため、仲介会社は販売のしやすさや手数料の総額を考え、人気の高い土地ほど建売業者さんに売りたがる傾向が強くなります。結果として、土地から探して注文住宅を建てたい方が、良い立地を確保するのは難しくなるという側面があります。
誤解2:「建売住宅は、水害や災害の多いエリアに建てられていることが多い」
建売住宅が災害リスクの高いエリアに集中しているという主張も聞かれますが、これは建売か注文住宅かという違いで決まるものではありません。
実際:選ぶのは買主自身。災害リスクは公平に判断されるべき
建売住宅であろうと、注文住宅用の土地であろうと、その土地の災害リスク(ハザードマップ、地盤の強さなど)は公平に存在します。
- 注文住宅を選ぶ方でも、価格や利便性を重視して浸水リスクのあるエリアを選ぶ方はいます。
- 建売住宅を選ぶ方の中にも、「ハザードマップの浸水エリアは避ける」と決めている方もいます。
結局のところ、立地の危険度に対する判断は、建物の種別ではなく、購入者一人ひとりの価値観と判断によって決まります。ハザードチェックは、建売・注文に関わらず、今や当然行うべき事前準備です。
確かに、注文住宅であれば基礎の高さを上げたり、外構に止水板を設置したりと、災害対策の自由度は高いですが、通常の注文住宅でもそこまで費用をかける方は少数派です。
誤解3:「建売は購入時安くても、メンテナンスコストが高いので結局損をする」
「初期費用が安い建売は、その後の維持費が高く、トータルコストで注文住宅に逆転される」という意見。これも検証が必要です。
実際:トータルコストで逆転は難しい。維持費は「材料」で決まる
メンテナンスコストの高さは、「建売だから」「注文住宅だから」という切り口ではなく、「どのような建材を使用しているか」によって決まります。
例えば、屋根材一つとっても、塗り直しが必要な安価なものもあれば、メンテナンスフリーに近いガルバリウム鋼板が使われている建売住宅もあります。
コスト比較の目安(例:屋根・外壁の塗り直し費用)
代表的なメンテナンスである屋根と外壁の塗り直しを60年間で3回行ったとして、1回あたり120万円と仮定しても合計で360万円です。
一方、建売住宅と注文住宅の価格差は、立地や規模にもよりますが、1,000万円以上の開きがあることも珍しくありません。この360万円程度の維持費の差で、1,000万円の初期投資の差を逆転するのは、非常に難しいと言えるでしょう。
また、「高熱費の節約効果でトータルコストが逆転する」という主張も、年間数万円程度の差にしかならないことが多いため、初期価格差を埋めるには相当長い期間が必要となります。
まとめ:家選びは「快適性」で判断を
今回の検証は、注文住宅を否定するものでは決してありません。私自身、注文住宅を建てて住んでいる経験から、その快適性の高さやデザインの自由度といったメリットは十分に理解しています。
しかし、マイホームを選ぶという大きな決断を、今回の話で取り上げたような「経済性」や「災害リスク」に関する間違った情報や偏見をベースに行うべきではありません。
建売住宅も進化しており、使われている材料や性能も様々です。大切なのは、多角的な情報を集め、ハザードマップや使われている建材の種類といったデータに基づいた判断を行うことです。
立地、建物性能、デザイン、そしてコスト。何を最も重視するか、ご自身の価値観と照らし合わせて、最良の選択をしてください。

