住宅ローン審査が通らない人向けのサービスは利用すべきでしょうか?
不動産会社や仲介業者が提供する「住宅ローンが通らない人向け」のサービスは、一見すると救世主のように思えるかもしれません。しかし、結論から言うと、原則として安易な利用はおすすめできません。
なぜなら、このようなサービスで住宅ローンが組めたとしても、それは通常の金融機関よりも金利が高かったり、手数料が多額だったりと、借入条件が非常に悪くなるケースがほとんどだからです。
一般的に、住宅ローンの審査が通らないのには必ず理由があります。その理由を解消せずに無理をして借入れをしても、将来的に返済に行き詰まるリスクが高まります。
審査が通らない主な2つの原因
住宅ローンの審査が通らない原因は、大きく分けて以下の2つに分類されます。
1. 借入れする人に問題がある場合
- 信用情報に問題がある(ブラックリストなど): 過去にクレジットカードの支払いを数ヶ月滞納したり、携帯電話料金を長期にわたって滞納したり、自己破産などの金融事故を起こしたりした履歴が信用情報機関に残っているケースです。この情報は個人信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)に記録され、金融機関は審査時にこれらの情報を確認します。一度でも金融事故の記録が残ると、基本的に通常の住宅ローンを組むことは非常に困難になります。記録が消えるまで待つしかなく、その期間は5年から10年と言われています。
- 返済能力に問題がある:
- 転職直後で勤続年数が短い: 多くの金融機関は、勤続年数1年以上を住宅ローンの審査条件としていることが多いです。これは、安定した収入が証明できないと判断されるためです。特に、キャリアアップを目的とした転職であっても、直後の不安定な時期には審査が厳しくなる傾向にあります。
- 自営業者で収入が不安定: 会社員と異なり、自営業者は収入が年によって大きく変動することがあります。金融機関は過去数年間の収入を見て総合的に判断するため、収入が不安定だと返済能力が不十分だと見なされることがあります。この場合、確定申告書などの追加書類を求められることが多くなります。
- 他の借入れが多い: 自動車ローン、カードローン、リボ払い、キャッシング、さらにはスマートフォンの分割払いなど、他の借入れが多いと、年収に占める年間返済額の割合(返済負担率)が高くなります。金融機関はこの比率を重視するため、他の借入れが多いと審査に通らないことがあります。
- 健康状態に問題がある: 多くの金融機関の住宅ローンでは、契約者が死亡または高度障害になった場合に残りのローンが弁済される「団体信用生命保険(団信)」への加入が必須です。過去の病歴や現在の持病などが原因でこの保険に加入できないと、住宅ローンを組むことができません。
2. 物件に問題がある場合
- 担保価値が低い物件: 金融機関は、万が一返済が滞った場合に、物件を売却して貸付金を回収できるように備えています。そのため、物件の担保価値を厳しく評価します。たとえば、建築基準法上の道路に接していない再建築不可物件や、災害リスクの高い土地、市場価値が著しく低い地方の山奥の別荘などは、担保価値がないと見なされ、ローンを組むのが難しくなります。
- 法的な問題がある物件: 違法建築物や、建ぺい率・容積率が明らかに建築基準法をオーバーしている物件は、金融機関も融資を避ける傾向にあります。これは、法的な問題を抱える物件に融資を行った場合、金融機関自身も責任を追及される可能性があるためです。また、都市計画法上の市街化調整区域にある物件も、原則として建物の建築が制限されているため、融資が難しくなるケースが多く見られます。
審査落ちの対策と解決策
なぜ審査に落ちたのか、その原因を正確に把握することが最も重要です。金融機関は審査落ちの理由を個別に開示しないことが多いため、ご自身で原因を分析し、適切な対策を講じる必要があります。原因が分かれば、無理のない条件で住宅ローンを組める可能性が高まります。
- 信用情報に問題がある場合: 信用情報機関に開示請求をして自分の情報を確認しましょう。金融事故の記録は5〜10年で消えることが多いため、焦らずに一定期間を空けてから再申請を検討する必要があります。
- 転職直後の場合: 勤続年数が1年を超えてから再申請をしましょう。
- 他の借入れが多い場合: 可能な限り他のローンを完済し、借入額を減らしてから住宅ローンを申し込みましょう。これにより、返済負担率を下げ、審査に通りやすくなります。
- 健康状態に問題がある場合: 団体信用生命保険への加入が任意である「フラット35」などの住宅ローンを検討するのも一つの方法です。ただし、この場合は契約者が死亡した場合でもローン残高が残るため、別途生命保険で備えるなどの対策も検討すべきです。
- 物件の担保価値が低い場合: 別の物件を探すことを検討しましょう。
まとめ
住宅ローンの審査に通らなかった場合、まずは焦らずにその原因を冷静に分析することが大切です。不動産会社や仲介業者が「特別にローンを通せる」とアピールするサービスは、通常の審査が通らない理由を解消せず、高金利や高額な手数料といった悪い条件を受け入れることに他なりません。
安易な借入れは、将来的に返済に行き詰まるリスクを高め、結果として人生の大きな負担となる可能性があります。返済に苦しむことになっては本末転倒です。まずは、ご自身の信用情報や現在の状況を見直すことから始めて、それでも解決が難しい場合は、専門家と相談しながら慎重な判断を心がけましょう。