「身体がどんどん良くなる家に…」を読みましたが怪しさ満載です
ふくろう不動産では仕事柄、不動産やマンション関連の雑誌や書籍を定期的にチェックしています。今回シックハウス関連の本を図書館で借りて読みました。ただ、その内容には典型的な問題を含んでいましたので、問題本の代表例として今回取り上げてみたいと思います。
何が典型的な問題なのかはページの最後の方でお話しします。
ビジネス系ジャーナリストが書いたシックハウス本です
今回ご紹介するのは「身体がどんどん良くなる家に住みたい さらば!シックハウス」(プレジデント社刊)です。
2006年発行の本ですので結構古い本です。著者は仕事術などビジネス系の本を多く執筆しているジャーナリスト、経営コンサルタントとのようです。
この本の良いところは、家が人の健康に悪い影響を与えることがあることを告知していること、そして化学物質過敏症と電磁波過敏症について、その危険性を訴えている事です。
逆に悪いところは、高い率で間違いと思われる記述があることです。著者が建築の専門家ではありませんから仕方がないかもしれませんが、本を執筆するのであれば、もう少しきちんとした調査を行ってほしかったと思いました。
また、本の後半はシックハウス対策や電磁波対策の商品紹介が中心となっています。ただ、これらの商品には効果があるものもあれば、怪しいと思われる商品もあります。
著者に悪意は全くないと思いますが、知識不足のせいで、変な製品紹介を行い、怪しい理屈を展開しているように感じます。
間違いや怪しいと思われる内容を取り上げました
本の内容は突っ込みどころ満載なのですが、とりあえず気が付いた点を取り上げてみます。
結露の有無は土地の磁場とは関係ありません
「土地の磁場が悪いと、結露が発生したり、腐りやすくなったり、シロアリが増えることにもなりかねない」と本文29頁に書かれています。
結露は空気中の水蒸気量や温度に影響を受けますが、磁場の影響は受けません。腐りやすさやシロアリについても、磁場との関係は恐らくありません。
高気密高断熱住宅の換気が不十分という意見は誤りです
「現代は高気密高断熱住宅が一般的である。窓を開け放つ習慣がないから室内の空気はいつもよどんでいる」と本文31頁に書かれています。
まず高気密高断熱住宅であることと、窓を開け放つ習慣はあまり関係がありません。高気密住宅は窓をめったに開けないものだと著者が勘違いしているのだろうと思われます。
また高気密高断熱住宅は換気システムに力をかけており、24時間換気システムが必ず入っています。高気密高断熱住宅の方が気密性を考えない住宅よりは、むしろ空気の循環は良いケースが多いと思います。
ちなみに2003年の建築基準法改正により、これ以降の建物には24時間換気設備の設置が義務付けられています。この本の発行は2006年なのですが、著者はこのような状況を知らなかったのだろうと思います。
結露対策の方法は意味が無い方法と間違った方法を提案しています
「外と中を均一に保つ。せめて家の中の温度差を少なく抑える。すると結露はできない。カビも生えない」と本文35頁に書かれれています。
「外と中を均一に保つ」とは、つまり暖房も冷房もするなということでしょうか。冬に暖房をせず、室内が外気温と同じ温度であれば、確かに結露もしませんが、そのような家では生活できません。意味のない提案です。
また家の中の温度差を抑えても、外壁のつくりに問題があれば、結露します。さらに家の中の湿度が高いことを問題としていますが、結露が起こりやすい冬は関東圏ではむしろ室内の乾燥が大きな問題となっています。
典型的な問題とは、知識が足りないという事です
このページの最初に、この本は典型的な問題を含んでいる、と書きました。その典型的な問題とは、著者に住宅関連の知識が不足しているという点です。
そして、詳しく知らないが故に、メーカーなどの意見やデータをうのみにして、その内容が正しいと信じているようです。
本の後半3分の2近くは、限りなくメーカーの宣伝に近い内容になっています。うかつに製品や効能の批判をするのは危険ですので、内容についての具体的な反論はしません。ですが、自分の知識に照らし合わせてこれらの内容を見ますと、恐らく半分以上は間違っています。
製品の実証実験をしたわけではありませんので、具体名が出せないのが歯がゆいのですが、どう考えても効果が無い効能や、性能を過剰に伝えていると思われる内容がたくさんあります。
シックハウスの問題や電磁波の過敏症については、現代の科学、医学では完全に解明されていない部分がたくさんあります。ですので、対策商品の全てを否定することはできません。しかし実際には効果が全くない製品も数多く出回っています。
この本で紹介された製品については、この製品のこの部分についてのみ、効果はありそう、と思われるところがありますが、それはごく一部で、ほとんどについては、効果は期待できないだろうなと思われました。
結果として、この本の内容はかなりオカルト的、この材料は効果があると信じなさい、という印象の本になっています。
市販されている本でも内容が間違っている本はたくさんあります
サイトの情報は玉石混合だと言われ、正しい内容や間違っている内容が色々と混ざっています。これが書籍になると、間違っている率は少し減りますが、それでもそれなりの率で間違った内容が記載されています。
例えば、バイブル本と呼ばれる企業の宣伝のための本や自費出版の本などは、その著者に有利な情報しか出ないようなつくりの本になっています。今回紹介しました本は、バイブル本ではないと思いますが、著者に知識が足りないために結果的にバイブル本のような内容になってしまいます。
本に書かれている内容が正しいのかどうかの判断は簡単ではありません。対策は自分で勉強して詳しくなることだけです。本についても色々な著者の本を、色々な角度から書かれた本を読まないと、怪しい情報を信じてしまうことになり兼ねません。
このサイトでも、私の勘違いや勉強不足で、誤った情報を公開しないように、注意しなければと改めて思わされました。
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