不動産仲介会社選びで失敗しないために(情報はどこまで開示されるべきでしょうか)

不動産の購入や売却は、人生における大きな決断の一つです。そして、その成功を左右する重要なパートナーとなるのが、不動産仲介会社とその担当者です。しかし、世の中には数多くの不動産仲介会社があり、どの会社を選ぶべきか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

「信頼できる営業マンか」「相性が良いか」といった点で選ぶという意見もよく聞かれますが、それだけで本当に大丈夫でしょうか?残念ながら、お客様の利益よりも自社の利益を優先したり、不利な情報を隠したりする仲介会社も存在するのが現実です。

では、どのような点に注意して仲介会社を選ぶべきか。今回は、私たちのようなバイヤーズエージェント(買主専門の仲介会社)がどのような方針で活動しているのかをご紹介することで、良い仲介会社選びのヒントをお伝えしたいと思います。

※本記事は、当社の活動方針を例に、仲介会社選びのポイントを解説するものです。一部、当社の宣伝と取れる内容が含まれますこと、あらかじめご了承ください。

相性や人間性だけで選ぶことの危険性

まず、仲介会社選びでよく言われる「営業マンとの相性」や「人間性」を重視する点についてです。もちろん、担当者とのコミュニケーションがスムーズであることは重要ですが、これだけで選ぶのは危険だと考えています。

なぜなら、たとえ相性が良く、人当たりが柔らかい営業マンであっても、必ずしもお客様の利益を最優先に考えているとは限らないからです。中には、お客様に好かれるような演技が上手なだけで、不利な情報を隠したり、自社の利益になる取引(後述の「両手取引」など)に誘導したりするケースも残念ながら存在します。

本当に重要なのは、担当者の「お客様に対する姿勢」と「提供される情報」の質です。

「情報を全て開示」することの重要性

私たちの方針として最も重視していることの一つが、「情報は全て開示する」ということです。そして、その情報が良いか悪いか、買うか買わないかは、最終的に買主様ご自身に判断していただくというスタイルを取っています。

これは一見当たり前のようですが、実は一般的な仲介会社の営業スタイルとは異なる場合があります。多くの仲介会社は、物件の悪い点や懸念点をあまり話したがらない傾向があります。なぜなら、マイナス点を話すことでお客様が購入を見送ってしまうと、また別の物件を探す手間がかかりますし、最終的に契約に至らなければ仲介手数料が得られないからです。

仲介会社の報酬は、契約が成立した際に発生する「成功報酬(成約報酬)」の形が一般的です。そのため、とにかく契約を成立させたいというインセンティブが働きやすく、結果として物件の悪い点には触れずに、契約を促そうとしがちな側面があるのです。

もちろん、物件の良いところも悪いところも全て理解した上で買主様が判断されるのであれば問題ありません。しかし、情報が隠されていたり、不利な点が簡単に説明されて注意が向かないようになっていたりする可能性も考慮する必要があります。

法定開示義務だけでは不十分な理由

「今の不動産仲介会社は、法律でお客様に不利になることは説明しなければいけないと決められているから大丈夫なのでは?」という反論もあるかもしれません。確かに、宅地建物取引業法において重要事項説明という形で説明が義務付けられている項目はあります。

しかし、残念ながら法的に説明義務のないデメリットもものすごくたくさんあります

  • 将来的な再建築のリスク(今は大丈夫でも、将来法改正などで建築ができなくなる可能性)
  • 将来的な価格下落リスク、資産価値の維持が難しいリスク(相場との比較など)
  • 現時点の法律には触れないが、技術的に問題のある物件特性(構造的な弱さなど)

これらは、実際にその家に住むとなると大きなデメリットやリスクとなり得ますが、仲介会社に説明義務があるわけではありません。お客様にとって本当に有益な情報を提供しようとする仲介会社であれば、こうした点についてもきちんと説明するはずです。

「何でも説明してくれるだろう」と無条件に期待するのではなく、「法定開示義務の範囲を超える情報まで提供してくれるか」という視点で仲介会社を見極めることが重要です。

情報格差を利用しない姿勢と「両手取引」への対応

多くの営業マンは、プロと一般のお客様との間の「情報格差」を利用して、仕事を有利に進めたがる傾向があります。例えば、購入希望の物件が相場と比べてどのくらい高いのかといった情報は、プロであればすぐにわかりますが、一般のお客様は成約事例などを調べるのが難しい場合があります。こうした知識の差を利用して、契約に結びつけようとするケースもゼロではありません。

さらに、仲介会社の大きな利益構造として「両手取引」があります。これは、一つの物件の売主様と買主様の両方から仲介手数料をもらう取引形態です。売主様側の仲介会社が買主様を見つけてきた場合などに発生します。両手取引になると、仲介会社としては片手取引(売主か買主のどちらか一方からだけ手数料をもらう)の倍の利益が得られるため、両手取引になる物件を優先的に勧めたり、そうでない物件をあまり良く言わなかったりする動機が働きやすくなります。

私たちは、両手取引によって当社が有利になるような契約を進めないための体制をとっています。具体的には、売主様が業者の場合など、売主様からも手数料を受け取る可能性がある場合でも、買主様からは片手取引相当の手数料しかいただかないような計算式を採用しています。両手でも片手でも最終的に受け取る額が変わらないようにすることで、両手取引を優先する動機を排除しています。

戸建て・土地購入で役立つ「技術的な説明」

私たちの方針の一つに、「技術的な説明が多い」という点があります(マンションは後述)。戸建てや土地の場合、単に物件を見るだけでなく、その構造やリスクについて深く理解することが重要です。

例えば、

  • 接道条件が曖昧な物件の将来的なリスク(再建築不可になる可能性など)
  • 建物の基礎や外壁のクラック(ひび割れ)や劣化状況、それに伴うリフォーム費用や構造的な可能性
  • 床下点検など、空き家の場合の点検内容と注意点
  • 窓の位置や構造壁の位置が持つ意味
  • 高低差のある敷地の場合の擁壁のリスクや注意点
  • 太陽光パネルが設置されている場合のリスク
  • 建物図面や仕様書から読み取れる物件の良い点・悪い点
  • 契約前の建物検査(ホームインスペクション)の内容と詳細な説明

これらは、住んでから発覚すると大きな負担となる可能性のある点ですが、法的な説明義務がない場合も多いです。私たちは、お客様が物件のメリットだけでなく、こうした潜在的なリスクも理解した上で判断できるよう、詳細な技術的説明を行うことを重視しています。

そのために、サーモグラフィーカメラ、レーザーレベル(傾き)、電磁波測定機、金属探知機、放射線測定機、クラックスケールといった様々な検査機器も活用し、目で見て分からない部分のチェックも行っています。

マンション購入で重要な「管理状況」の見極め方

マンションの場合、戸建てとは異なり、建物自体の構造問題に加えて「管理状況」が非常に重要になります。どんなに素晴らしい建物でも、管理が悪ければ資産価値は維持できませんし、快適な住環境も失われてしまいます。

私たちは、マンションの内見時や契約前に、以下の点を特に重視して説明しています。

  • 内見時の共用部分のチェック: 外廊下、バルコニーの使い方、駐車場・駐輪場の状況、郵便受け、ゴミ置き場、掲示板などから、管理レベルを推測します。
  • チラシ・広告からの読み取り: 総戸数、管理費、修繕積立金の金額から、将来的な修繕費の高騰リスクや、修繕積立金不足の可能性などを説明します。
  • 契約前の重要書類のチェック: 重要事項調査報告書、管理規約、長期修繕計画書、管理組合の議事録などを取り寄せ、管理費の滞納状況や大規模修繕の計画、過去のトラブル履歴などを詳細に確認・説明します。

これらの情報開示を渋る仲介会社も残念ながら存在します。管理状況が分からないままマンションを購入するのは、大きなリスクを伴います。管理に問題があるマンションは、将来的なスラム化や、必要な修繕ができずに資産価値が大幅に下落したり、一時的な高額な修繕金徴収が発生したりする可能性があります。

100%正確な判断は難しい場合もありますが、こうした情報や推測されるリスクについて丁寧な説明があるかどうかも、仲介会社を選ぶ上で重要なポイントです。

お客様に「押さない」営業スタイル

私たちの営業スタイルは、基本的にお客様を「押さない」というものです。電話での営業活動は一切行いませんし、突然のご訪問などもありません。基本的に、資料の送付や確認、ご質問への回答といったやり取りはメールを中心に行います。詳細な説明が必要な場合は、事前に予約を取ってオンライン(Google Meetなど)で説明会を行うこともあります。

なぜこのようなスタイルを取っているかというと、お客様にご自身のペースでじっくりと検討していただきたいからです。私たちは判断材料を最大限に提供し、不明な点は説明しますが、「この物件は絶対大丈夫です!」「今買わないと損します!」といった形で契約を急かしたり、お客様の背中を押したりすることはしません。

こんな方には合わないかもしれません

このような私たちのスタイルは、全てのお客様に合うわけではありません。

  • 「この物件は間違いない」と背中を押してほしい方: 私たちは判断材料を提供するのみで、最終的な決断はお客様ご自身で行っていただきます。強い後押しを期待される方には合わないでしょう。
  • 厳しい意見やマイナス点を指摘されるのが苦手な方: 物件のデメリットやリスク、時にはお客様の行動について正直な意見をお伝えすることもあります。耳障りの良い話だけを聞きたい方には不向きかもしれません。
  • 自分の指示を絶対視する方: お客様のご要望にお応えできるよう努めますが、法律や倫理に反すること、あるいは物理的に不可能なことなど、お受けできないこともあります。その際はできない理由をはっきりとお伝えするため、全てを思い通りにしたいという方には合わない可能性があります。

ただし、耳障りの良いことばかり言う営業マンは、結果としてお客様を都合の良い方向に誘導しているだけ、という可能性もゼロではありません。知識が豊富なプロの意見を客観的に聞く姿勢も、不動産選びにおいては非常に重要です。

他社の紹介はしない理由

リフォーム会社、司法書士、保険会社など、関連する他社を積極的に紹介することも原則として行っていません。相談を受ければ情報提供はしますが、特定の会社を「ここが良いから使ってください」と勧めることはありません。

これも、お客様の利益を最優先に考えるためです。私が見る限り、仲介会社が紹介する業者は、相場と比べて料金設定が高いケースが少なくありません。これは推測ですが、紹介元である仲介会社への何らかの「見返り」が発生しているために、価格に上乗せされている可能性があると考えています。

お客様ご自身が良いと思う業者を選ばれた方が、費用を抑えられることが多いです。紹介料を得るために特定の業者を勧める、ということはしない方針です。

まとめ:仲介会社選びは「なぜ」を問う姿勢で

今回は、当社の例を挙げながら、不動産仲介会社を選ぶ際にどのような視点が重要になるかをお話しさせていただきました。

良い仲介会社は、お客様の利益を第一に考え、物件の良い点だけでなく、悪い点やリスクについても包み隠さず説明してくれます。法的な義務範囲を超える情報提供や、専門的な視点からのアドバイスがあるかどうかも、重要な判断基準となるでしょう。

もし、検討中の仲介会社やその担当者から「これが良いですよ」「この方がお得です」といった提案があった際には、「なぜそれが良いのですか?」「他と比較してどう違うのですか?」「デメリットやリスクはありませんか?」と、ぜひ理由を深く掘り下げて質問してみてください。

漠然と「良い会社そうだから」「担当者が熱心だから」と選ぶのではなく、提供される情報や、その根拠、そしてお客様の利益をどこまで考えてくれているかという点を見極めることが、不動産取引の成功に繋がります。

この記事が、皆様の仲介会社選びの一助となれば幸いです。もし、記事の内容でさらに詳しく聞いてみたい点などがありましたら、コメント欄ではなく、直接メールにてお気軽にご質問ください。(多数のご質問や複雑な内容でない限り、メールでの返信をさせていただいております。)

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