「買ってはいけない不動産」は本当にあるのでしょうか
不動産選びの際、「買ってはいけない物件」という言葉を耳にすることがよくあります。しかし、本当に買ってはいけない不動産は存在するのでしょうか?の私の意見は、「原則として、買ってはいけない不動産はない」というものです。
あくまでも、その不動産が持つデメリットを考慮した上で、価格が妥当かどうかが最も重要だと考えています。
ただし、唯一の例外があります。それは、「ただでも手放せない不動産」です。売ろうと思っても買い手がつかない、あるいは引き取り手がお金を出してでも見つからないような物件は、どんなに安くても手を出すべきではありません。これのみが買ってはいけない不動産で、これ以外は価格次第であると私は考えています。
不便さや資産価値の低下は本当に問題?
世間では「買ってはいけない不動産」の理由として、以下の3つが挙げられることが多いです。
- 不便さや不快さがある
- 資産価値が維持できない
- 安全性が低い
これらの点について、一つずつ掘り下げていきましょう。
1. 不便さや不快さ
エレベーターがないマンションの上層階や、玄関やエレベーターの横にある部屋などは、不便で不快だと感じるかもしれません。しかし、もしその不便さを補うほどの大きな価格差があるとしたらどうでしょうか?
例えば、1階の部屋が1,000万円に対し、5階の部屋が500万円だった場合、500万円の差額と日々の階段利用を天秤にかける必要があります。この判断は、個人の生活スタイルや価値観によって異なります。
重要なのは、周りの意見に流されるのではなく、ご自身でそのデメリットを許容できるかどうか、そして価格差がそのデメリットに見合っているかどうかを判断することです。
2. 資産価値の維持
資産価値がないからダメだという意見もよく聞かれます。しかし、そもそも「資産価値」とは、購入価格と売却価格の差額で考えるべきだと私は考えています。
例えば、将来ただ同然でしか売れないような物件でも、買う時の価格が極端に安ければ、十分元が取れる可能性があります。売却時に安く売ることになるとしても、購入価格との差額が小さければ、決して悪い買い物とは言えません。
「売却時に高く売れないからダメ」と一律に判断するのではなく、購入時から売却時までのトータルで損得を考えることが大切です。
3. 安全性の問題
旧耐震基準の物件など、安全性の問題は確かに見過ごせません。しかし、これも「比較の問題」で考えるべきです。
例えば、今住んでいる賃貸アパートも旧耐震で、購入を検討している物件も同じく旧耐震だったとします。この場合、どちらに住んでいても安全性のリスクは同じです。
もちろん、安全性の低い物件を安易に推奨するわけではありません。しかし、「購入」という行動だけに焦点を当てて「安全性が低いから買ってはいけない」と断定するのではなく、「今」の生活と比べてどうなのかを考慮することが重要です。
ただでも手放せない不動産の具体例
「ただでも手放せない不動産」とは、具体的にどのような物件を指すのでしょうか。
- 明らかな欠陥があるマンション:建物自体が傾いている、構造的に問題があるなど、高額な修繕費用がかかる可能性があり、将来的に売却が非常に困難な物件。
- 修繕積立金が明らかに不足しているマンション:適切な修繕ができず、将来的にスラム化する可能性がある物件。
- 再建築不可の土地・戸建て:建物を壊して新築を建てようと思っても、法律上の問題(道路条件など)で再建築ができない物件。
- 需要が全くない土地・建物:別荘地など、そもそも買い手が付くことがほとんどない物件。
これらの物件は、いくら安くても避けるべきです。一方で、既存不適格(建てられた時点の法律には適合していたが、現在の法律には適合しない物件)など、一概にダメとは言えない物件も多く存在します。大切なのは、表面的な情報だけで判断せず、その内容を詳しく確認することです。
まとめ
「買ってはいけない不動産」という一律のルールで判断してしまうと、選択肢が非常に狭まってしまいます。不動産は一つとして同じものはありません。
物件の持つデメリットを正しく把握し、そのデメリットと価格を比較する。そして、ご自身の価値観や生活パターンに照らし合わせて最終的な判断を下す。これが、本当に良い不動産を見つけるための鍵です。