ビフォーアフターのはんにゃ川嶋さんの実家マンションリフォームを不動産屋的視点で考えました
2016年8月7日に、テレビ朝日で「大改造!!劇的ビフォーアフター」という番組が放映され、はんにゃ川嶋さんの実家のマンションのリフォームについて紹介されました。
ビフォーアフターは10年以上続いている人気番組ですが、リフォームの内容については賛否が色々なところで語られているようです。このページではリフォームの内容や良し悪しというよりは、こういった番組を見て、不動産屋はどう考えたか、について少しお話ししたいと思います。
15階建てマンションですが、だから問題があるとは言えません
今回リフォームされたマンションは15階建てです。少しマンションに詳しい人であれば、15階建ては良くないマンションではないか、と考える人もいるようですが、私は15階建てだから駄目だとは考えていません。理由は「マンションは14階建ては良くて15階建てはダメという話は本当でしょうか?」のページに書いています。
ですので15階建てだからどうこうという話は全く無いのですが、14階建て、15階建てというマンションを見るたびに、この階数についての話を思い起こします。もし15階建てのマンションがダメと考えている人は、上記サイトを1度読んでもらえればと思います。
フローリングは重ね張りでも管理組合の了解を取る方が安心です
さて、リフォームの内容について考えます。このマンションリフォームで、雰囲気を変える大きな要素は床と壁の変更です。床は既存のフローリングの上から無垢のフローリングを張っています。また和室の畳は取り除き、リビングと一体とした上で、和室部分の床はコルクタイルとしています。
マンションの床に無垢のフローリングが使われる事はあまりありません。マンションの規定で防音フローリングを使わなければならない事が多いのですが、ほとんどの無垢のフローリングは防音の基準を満たさないからです。
ではマンションでムクフローリングは全く使えないかと言えば、そうとも限りません。無垢のフローリング自体には防音性は無くても、その下地に防音マットや遮音材などを使う事で、認められるケースもあるからです。
今回放映した番組では、既存のフローリングの上に無垢フローリングを重ね張りするので、問題ないとしています。確かに元々のフローリングは防音フローリングですから、その上に新しい板を付け足すのは問題ないだろうという考えです。確かに実際に問題は無いのかもしれませんが、単純に上から重ねるだけで問題が出ないとは限りません。
音の響き方は単純に何でも重ねれば音が低くなるとは限りません。壁や床でも、別の部材を上から付ける事で、太鼓現象と呼ばれる共鳴が起き、かえって音が大きくなる事もあるからです。ですので、上から新たに床を張る場合でも、管理組合に了解を取ってから工事を進める方が安心ですし、後からのトラブルを防ぐためにもそうすべきだと思います。
今回のリフォーム工事で、管理組合とどのように話をしたのかは全く出てきませんでしたので、正確なところは分かりませんが、簡単に上から重ね張りをするだけだから何でも大丈夫、とは考えない方が良いと感じました。
もっとも今回のリフォームでは音についてもある程度考えているのでは、と思わされました。和室の床部分はフローリングではなく、コルクタイルにしている点に、そのような配慮を感じます。
畳の部屋のすぐ下はコンクリートがむき出しになっていました。この上に直接フローリングを張ると、高い確率で下に音が響きます。もしリビングと同じように無垢フローリングにしようと思うと、やはりフローリングの下の防音処理を考えなければなりません。それよりは、コルクタイルとした方が、音の影響は少ないと考え、この材料にしたのではないかと思われます。
テレビで放映されるのは本当にごく一部ですので、建築家がどこまでどのように考えてリフォームしたかがあまり正確に反映されません。ですが、部分部分を見る限り、それなりに考えて施工したのではないかと予想できます。ですので、無垢フローリングについても管理組合の了解を取っているのかもしれません。
ですが、テレビを見ている方は、フローリングは重ね張りであれば何でも大丈夫である、とは思わない方が良いと思います。
クロスの上から塗るしっくいは厳密には本物の漆喰ではありません
このリフォームでは床だけでなく、壁も変えています。今までのビニールクロスの上から漆喰と珪藻土を塗る左官壁としています。この放送を見て、漆喰はクロスの上から塗る事ができるものだと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本来の漆喰、昔から使われているしっくいは、ビニールクロスの上から塗る事はできません。これはしっくいとはどのような材料なのか、という定義にもよりますので、あれはしっくいである、あるいはしっくいではない、と言い切る事が出来ないのですが、昔から使われているしっくいでない事は確かです。
今は色々な技術が発達したため、クロスの上から塗る事が出来るしっくいが開発されました。これをしっくいであるとするか、漆喰調の左官材と考えるかは、人によって言い方は違うでしょう。これが厳密には漆喰ではなく、しっくい調の塗料だとしても、それが悪いという話ではもちろんありません。
ただ、漆喰は普通にクロスの上から塗る事が出来るのだ、と思ってもらっては困るというだけです。今回のリフォームは和風の雰囲気を出すためにしっくいや珪藻土壁を使うだけですので、そこに機能を求めている訳ではありません。機能を求めないのではあれば、本物であるか、似せた商品であるかはどちらでも良いと思いますので、あれはあれで良いと思っています。
ベランダの使い方も管理規約や法律で細かく決められています
リフォームは室内だけでなく、ベランダにも手を入れています。ベランダは専用使用ができる共有部分という少し変わった場所です。元々が共用部分であるため、このスペースに大きな工事を行う事はできません。
今回のそのために、バルコニー内でアンカーを打ったりビスを留めたりという工事は全く行わず、基本的に置くだけで済むリフォームとしています。何か問題があった時や、バルコニー床の塗装や防水工事を行う際には、取り外して元の状態に戻せるように配慮されています。
さすがにあからさまに法律違反をしてテレビで放映されますと、後々問題になり易そうですので、明らかな問題は見受けられません。一方でこの内容が本当に問題が無いかどうかはまた別問題です。
軽量のものを置くだけであれば問題にならない事も多いのですが、一方でベランダは避難通路という側面があります。こでは火事などの際に、隣の住戸の人が逃げ出す時には、バルコニー境の隔壁を破り、そこから逃げ出せるようにしなければならないというものです。
そのために隔壁付近には原則として物を置いてはいけません。マンションの住戸によっては、鉢植えがベランダ中にぎっしりと置かれていて、人の通りを妨げるようになっているマンションもあります。これはもちろん管理規程違反です。いざという時に動かせる鉢植えであっても、その数が多いと取り除くのに時間がかかります。火事か何かの危急の際に、そのような余計な作業をさせるような植栽の置き方になってはいけません。
今回放映のマンションは、それだけ多くの植栽があったようには見えませんでしたので大丈夫だとは思いますが、所在の窓から見た風景では結構たくさん植栽があるようにも見えましたので、このようなところには注意したいものです。
他にも坪庭造りで、下に苔なども植えていましたが、バルコニーの上に直接土などを置くようにはなっていませんでしたので、基本的には問題が無さそうなリフォームだと感じました。ただこれも、よく知らない人が、バルコニー上に土や小石などを直接置き、坪庭造りなどを行わないようにして欲しいとも感じました。
ローコストで部屋の雰囲気を変えるという点で良いリフォームだと思います
今回の放映を見て、このような感想を持ちました。リフォーム内容に大きな問題は無いように感じますし、予算を考えれば十分な内容ではないかと思います。通常リフォームでは既存のものを壊し、新しいものを作り直します。ですが今回のリフォームは床にしても壁にしても、今までのものの上から張ったり塗ったりするリフォームが中心です。そして通常のマンションリフォームはこれで十分ではないかと私は思います。
実際のところ、部屋の雰囲気は内装材と家具、照明の組み合わせで本当に大きく変わります。マンションのリフォームではスケルトンリフォーム等の大掛かりなリフォームを好む方もいますが、スケルトンリフォームは資産価値の維持という点では不利と思われる点がたくさんあります(「中古マンションはスケルトンリフォームで資産価値が上がるでしょうか?」参照)。
その点、今回のリフォームはそれほど費用をかけず、その割には雰囲気を大きく変える事ができるという良い例ではないかと思います。ビフォーアフターのリフォームは、建築家(匠)のデザイン費や実際に働いたはんにゃのお2人の人件費なども入っていませんので、本当にこれだけのリフォームを行うにはもっと多額の費用がかかるでしょう。
一方で、内装の変更くらいであれば、低予算で出来る事も分かりますし、壁の左官であれば、最悪DIYでも工事可能の範囲です。中古マンションを購入したいが内装が不満、という方は、こういったリフォームもある、という参考になるのではないかと思います。
このページの内容は、当社:ふくろう不動産の個人的な意見ですので、どの部分がどう役に立つという話ではありません。しかし不動産を購入しようとされている方は、色々な角度から不動産について考えて欲しく、今回の記事を作りました。
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