「家が余るから家賃は下がる、買うのはバカ」説は本当ですか?

「将来、日本は家がどんどん余っていく。供給過剰になれば当然、家賃だって暴落するはずだ。だから今、高い金を払って家を買うなんてバカのやることだ」

ネットやSNSの掲示板、あるいは一部の経済評論家の意見としてよく目にするこの主張。人口減少が加速し、少子高齢化が確実な日本において、一見するとこの市場予測は非常に論理的で抗いがたい正論のように思えます。しかし、2026年現在の不動産市場、そして賃貸経営の現場のリアルを直視すると、この理屈には「現場を知らない人間が見落としている大きな落とし穴」があると感じられます。

今回は、単なる数字上のデータではなく、不動産業界の実態に基づき、この「家余り幻想」が抱える危うさについて考えていきます。

1. 「家が余っている」のに「家賃が上がっている」という矛盾の正体

まず、マクロデータとしての事実はその通りです。日本中の空き家は増え続けており、統計上は数百万戸、あるいはそれ以上の単位で住宅が余っています。しかし、ここ数年の実際のマーケットで何が起きているかを注視してください。

驚くべきことに、家賃は下がっていないどころか、主要都市や利便性の高いエリアでは、ここ1年だけでも1割〜2割近くも上昇しています。

なぜ、これほど供給過剰が叫ばれている中で、価格(賃料)が上昇し続けているのでしょうか。そこには、単なる「戸数」の多寡だけでは説明できない以下の深い要因があります。

  • 維持・修繕コストの構造的な高騰: 住宅は建てて終わりではありません。深刻な人手不足による人件費の高騰、原材料費のアップ、さらには高度化するリフォーム費用の増大により、オーナー側は家賃を上げなければ採算が合わない状況に追い込まれています。
  • 「居住価値」の極端な二極化: 「余っている家」の多くは不便な場所や築古物件です。一方で、人々が「今すぐ住みたい」と熱望する便利な場所への需要は以前より集中しています。
  • インフラ維持とコンパクトシティ化の加速: 自治体がインフラを維持できるエリアを絞り込む中、選ばれたエリアの不動産価値は上昇し、選ばれなかった場所はどれほど安くなっても生活圏として機能しなくなる恐れがあります。

2. 大家さんが「空室のまま」を頑なに選ぶ切実な理由

賃貸経営の現場では、「安くしてでも貸す」ことが非常に「筋の悪い判断」とされるケースがあります。大家さんには、「安易な入居が経営を破綻させるリスク」を極度に恐れる理由があるからです。

  • 孤独死と特殊清掃という経営的インパクト: 万が一室内でお亡くなりになり発見が遅れた場合、特殊清掃費やリフォーム代で100万円〜200万円単位のキャッシュが吹き飛びます。
  • 法的・物理的な「明け渡し」の困難さ: 借り手を強力に保護する法律により、トラブルが起きても退去させるのは至難の業です。解決までに多額の弁護士費用がかかるケースも珍しくありません。
  • 「事故物件」化による恒久的なブランド毀損: 告知義務が発生すれば、その後の家賃を数年にわたり大幅に下げざるを得ず、資産価値そのものが毀損します。

こうしたリスクを考えると、「家が余っているから誰でも安く借りられる時代が来る」というのは、あまりに楽観的な見通しと言わざるを得ません。

3. 「老後は公的なセーフティネットがある」という幻想

「最後はURや公営住宅があるから大丈夫だ」という考えも、現実は甘くありません。

利便性が高く住みやすい公認住宅は、現時点でも驚くほどの高倍率であり、常に満室状態です。今後、高齢化が進む中で競争はさらに激化します。数十年後、あなたが住まいを探す際に残っているのは「買い物も病院も遠い不人気な場所」だけという結末も、決して大げさな話ではないのです。

4. 「持ち家派」vs「賃貸派」:問われているのは資産の「形」

本質的に重要なのは、「自分の老後を、どのような資産背景で支えるか」というポートフォリオの戦略です。

持ち家を選択する人

資産を「住居という現物資産」として固定。老後の住居費を最低限に抑え、入居拒否という精神的不安から解放される。

賃貸を選択する人

不動産を持たない自由を謳歌する代わりに、将来的な家賃上昇や入居ハードルを「圧倒的な貯蓄」で解決する必要がある。

最悪のパターンは、楽観的な市場予測を鵜呑みにし、貯蓄も備えも不十分なまま老後を迎えてしまうことです。

まとめ:幻想ではなく、目に見える「現実」で判断しよう

  1. 「住みたい」場所の価値は、家が余っていても下がっていない。
  2. 人件費や維持費の暴騰により、家賃はむしろ上昇トレンドにある。
  3. リスク回避から、空室があっても審査は厳格化している。

「借り続ける」道を選ぶのであれば、将来どんな価格設定や厳しい審査であっても突破できるだけの資金力を蓄えておく。それこそが、将来の自分を守るための唯一かつ現実的な「自己責任」の形ではないでしょうか。

Follow me!

不動産購入のご相談はふくろう不動産まで

CTAの画像
まずはメールにてご相談ください。