住宅ローン本審査通過後から融資実行までに「やってはいけないこと」をお話します
住宅ローンの本審査に通過し、いよいよ夢のマイホーム購入が現実味を帯びてきた!と、気分が高揚している方も多いでしょう。しかし、ちょっと待ってください。実は、本審査が通ったからといって、100%融資が確定したわけではありません。融資が実行され、資金が振り込まれるまでは、金融機関の判断で融資が取り消される可能性がゼロではないのです。
もし、融資が取り消されてしまった場合、不動産売買契約の解除に伴う違約金の発生や、引き渡し遅延による損害金、あるいは別のローンを組むことになった場合の金利上昇など、何百万円もの大きな損失につながる可能性があります。金融機関は、本審査で承認を出した後も、融資実行までの間に申込者の状況に変化がないか、信用情報に問題が発生していないかなどを最終確認します。この最終確認で問題が見つかると、融資は実行されず、最悪の場合、売買契約自体が破談になることもあり得るのです。
そうならないために、本審査通過後から融資実行までの間に「絶対にやってはいけないこと」を具体的に見ていきましょう。
1. 会社を辞める・転職する
これは「論外」と言えるほど、最もやってはいけないことです。住宅ローンの審査は、現在の勤務先での安定した収入と勤続年数を前提に行われています。融資実行前に会社を辞めたり、転職したりすると、金融機関は「審査の前提条件が崩れた」と判断します。これにより、信用度が著しく低下し、審査のやり直しどころか、融資そのものを取り消す可能性が極めて高いです。例えば、転職先が決まっていても、新しい職場での勤続実績がないため、収入の安定性が疑われ、審査基準を満たさなくなることがあります。金融機関にとって、申込者の「信用」は最も重要であり、前提条件の変更は信頼関係を損なう行為と見なされます。
2. 新たなローンを組む(自動車ローン、カードローンなど)
「新しい家には新しい車を!」と、新車をローンで購入したくなる気持ちは分かります。しかし、これは非常に危険な行為です。金融機関は、住宅ローンの本審査時に「他に借り入れがない」という前提で、申込者の返済能力を厳密に計算し、融資を承認しています。融資実行前に新たな借り入れが発生すると、その分だけ毎月の返済額が増え、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が上昇します。これにより、金融機関が設定する返済負担率の基準を超過し、返済能力に影響が出ると判断され、審査のやり直し、場合によっては融資取り消しにつながります。
自動車ローンだけでなく、残債型ローン(残クレ)や、家電購入のためのローン、教育ローン、さらには消費者金融からの借り入れなど、あらゆる新規の借り入れが対象となります。たとえ少額であっても、新たなローンは金融機関に把握され、審査に影響を与えることを肝に銘じてください。
3. クレジットカードの分割払いを利用する
「借金じゃないから大丈夫」と思いがちですが、金融機関はクレジットカードの分割払いも「借金の一部」とみなします。たとえ金利がかからない分割払い(例えば、3回払いなど)であっても、「後から支払う義務」が発生していると判断されるため、毎月の返済額に影響を与え、返済負担率を押し上げる要因となります。これは、申込者の金融リテラシーや、資金管理能力に疑問符をつけられることにもつながりかねません。融資実行までは、高額な買い物での分割払いは避けるべきです。
4. キャッシングを利用する
急な出費で手元にお金がない場合でも、クレジットカードのキャッシング枠を利用したり、カードローンなどからの借り入れを行ったりすることは絶対にやめましょう。これは間違いなく「借り入れ」と判断され、個人の信用情報機関に記録されます。住宅ローンの審査では、信用情報が非常に重視されるため、キャッシングの利用履歴は審査に極めて悪影響を与えます。たとえすぐに返済したとしても、利用したという事実自体がマイナス評価となることを理解してください。
5. 高額な買い物をクレジットカードの一括払いで行う
一括払いであれば原則問題ないはずですが、例えば数十万円以上するような高額な買い物をクレジットカードで行う場合、一時的とはいえ大きな出費とみなされ、金融機関が「一時的な借金に近い」と判断する可能性もゼロではありません。特に、住宅ローンの融資実行直前に多額の現金が手元から流出することは、金融機関に「この申込者は本当に返済能力があるのか、資金繰りに問題はないか」という疑念を抱かせる可能性があります。リスクを避けるためにも、高額な買い物は現金で行うか、融資実行後に検討するのが賢明です。
6. 信用情報に問題が出る行為(公共料金やカードの引き落とし遅延など)
銀行の引き落とし口座の残高不足で、公共料金(電気、ガス、水道など)やクレジットカードの利用料金、携帯電話料金などの引き落としができなかった場合、個人の信用情報に傷がつく可能性があります。一度のミスで即座に融資が取り消されることは稀かもしれませんが、金融機関は融資実行までに申込者の信用情報を再度確認します。このような問題があると、「本当にこの人に融資して大丈夫か?」と疑念を持たれ、返済能力や金銭管理能力に不安があると判断され、融資取り消しにつながるリスクが高まります。自動引き落としの設定や口座残高の確認は、普段から徹底するようにしましょう。
7. 新たにクレジットカードを作る
「カードを作るだけなら問題ないだろう」と思うかもしれませんが、金融機関は、新しいクレジットカードの作成を「借金ができる枠が増えた」と判断します。これは、たとえ実際に借り入れをしていなくても、将来的な借り入れリスクが増加したとみなされ、マイナス評価につながることがあります。特に、短期間に複数のクレジットカードを申し込む行為は、金融機関に「この申込者は多重債務に陥る可能性がある」という印象を与えかねません。融資実行までは、新たなカードの作成は控えましょう。
8. スマートフォンを分割払いで購入する
スマートフォンの機種代金を毎月の利用料と合わせて分割で支払う契約も、金融機関からは「分割購入=新たな借金」とみなされる可能性があります。クレジットカードの分割払いと同様に、毎月の返済負担が増えることになり、返済負担率に影響を与えることがあります。携帯電話会社との契約内容によっては、これが信用情報に登録されるケースもあり、住宅ローンの審査に影響を及ぼす可能性も否定できません。たとえ少額であっても、融資実行までは極力避けるべきです。
まとめ:高揚した気持ちを抑え、冷静な行動を
住宅購入という人生の一大イベントの最中は、気分が高揚したり、興奮のあまり冷静な判断が難しくなったりしやすいものです。普段なら冷静に判断できることも、この時期はつい軽率な行動に出てしまうことがあります。
「本審査が通ったからもう安心」ではなく、「融資実行までが本当の確定」であることを強く認識してください。融資実行までは、まるで「仮免期間」のように、金融機関から常に監視されているという意識を持つことが重要です。
少しでも不安なことがあれば、不動産会社の担当者や金融機関に必ず相談しましょう。彼らは、この期間に「やってはいけないこと」について、皆さんに同じアドバイスをしてくれるはずです。
せっかく掴んだマイホームのチャンスを、軽率な行動で失うことのないよう、細心の注意を払って融資実行日を迎えてください。