不動産は売却した後に隠れた瑕疵などで訴えられたりする危険があります。
この「後から訴えられる可能性」は結構重要な項目なのですが、売主さんによってはあまり考えていない方もいらっしゃいます。この方々は、売ってしまえば後は関係ない、ですとか、現状有姿で引き渡したのだから、そのままで問題ない、とお考えのようです。

ですが実際には違います。契約から引き渡しまで無事に終わったとしても、その後何かしらの問題があれば、損害賠償請求などを受ける可能性があります。これは売主が不動産業者である場合はもちろん、売主が個人の場合でも当てはまります

裁判所イメージ写真

不動産売却は高く売れればそれでOKというものではありません。正しい対応をしなければ、訴えられる可能性があるのです。

雨漏りを知っていて話さずに売れば、訴えられた場合裁判で負けます

例えば雨漏りがする中古の戸建住宅を売ったとしましょう。雨漏りは以前から定期的に発生しており、何度も修繕を行いましたが結局直らず、嫌気がさして売りに出したとします。売ってしまえばあとは構わないとばかりに、不動産仲介会社にも黙って販売した場合、後から訴えられるのは売主です。

知っていてその内容を話していなかったとすれば告知義務違反となり、裁判になればほぼ負けます。知らなかった、では通りません。特に修繕などを行っていれば、知らないはずはないと見なされ、意図的に隠した、と裁判官が判断すれば大変なことになります。

売主が個人の場合の中古住宅売買契約では、売主が持てる責任は限られてしまいますので、瑕疵担保責任を免除するような特約を入れることが多くあります。しかしこの特約は売主がその瑕疵を知らなかったという前提があってこそ有効ですが、もし知っていた場合は特約に書かれていたとしてもその特約は無効とされてしまいます。特約の無効に加え、告知義務違反などで損害賠償などの額は大きくなる可能性があります。

この瑕疵を不動産会社に話をして、その不動産会社も黙っていたとすれば、不動産会社も同罪になります。ただ、同罪といっても、売主の責任が免れる訳ではありませんので注意が必要です。

瑕疵を本当に知らなかったとしても100%安全ではありません

では、この雨漏りの事実を売主が本当に知らなかった場合はどうなるでしょうか。この場合であっても、大丈夫とは言い切れません。

まず瑕疵担保責任を負わない旨の特約がなければ、損害賠償請求などをされてしまいます。売主も知らなかった瑕疵はいわゆる「隠れた瑕疵」と呼ばれるものですが、民法上の規定では隠れた瑕疵は無過失責任、つまり売主に何ら落ち度がないとしても、責任を負わなければなりません

では、瑕疵担保責任を負わない旨の特約を契約書に入れていた場合はどうでしょうか。危険度はかなり減りますが、これも絶対という訳ではありません。瑕疵があまりにもひどい場合には訴えられることがありますし、それがどのレベルであれば問題になるかについてもはっきりと決まっていません。

現状有姿での引き渡しは、そのまま瑕疵担保責任を負わない訳ではありません

勘違いされている方も多いのですが、現状有姿で引き渡すということと、瑕疵担保責任を負わないということは同じことではありません

住宅設備など、ある程度寿命が想定できるものについては、現状有姿ということで、壊れてしまっても問題にならないこともありますが、構造に関わる部分については現状有姿で、といってもその主張が通らないことがよくあります。

対策としてはインスペクションや瑕疵担保保険などがあります

ではこの危険を避けるためにはどうしたら良いでしょうか。
対策はいくつか考えられますが、とりあえず必須と思われる対策は、
1.知っている内容は全て話し、隠し事をしない
2.瑕疵担保責任を負わない旨の特約を入れた売買契約を結ぶ
は必須だと思います。

しかしこれだけではまだ不安も残るので、
3.建物インスペクションを行う
4.既存住宅の瑕疵保険に加入する
という対策を取ることをお勧めします。

私は中古住宅の購入を検討している人に向けて、中古住宅向けの瑕疵保険に入った方が良いとお勧めしていますが、これは売主さんの保険にもなりますので、売主さんに対してもお勧めしています。

既存住宅売買瑕疵保険の図

中古住宅の瑕疵担保保険はこのような形で進みます。原則として売主側が保険の申請を行うことになります。

住宅瑕疵担保責任保険協会のサイトより(別ウインドウで開きます)

保険や検査費用は損害賠償費用よりははるかに安い金額です

もちろん保険や検査の費用などがかかりますが、後から損害賠償などで支払わなければならない費用よりは当然安く済みます。この保険は建物の主要な構造部と、雨漏り対策としての屋根・外壁部分を保証します。

保険料は保証期間や保証内容、また保険法人などによっても金額は異なるようですが、検査料も含めて10万円位で済む場合もあるようです。建物に不具合が見つかり、修繕などが必要になった場合はその分さらに費用がかかりますが、問題がある場合にはどのみち修繕しなければなりませんので、むしろ最初から費用が計算できる方が良いと思います。

建物だけではなく土地にも瑕疵はあります

ここまでは主に戸建住宅の建物部分の瑕疵について考え的ましたが、瑕疵は建物だけとは限りません。土地単体でも瑕疵がある場合があります。

例えば土地の面積です。土地は登記簿に何平米と面積が記載されていますが、この面積が正しいとは限りません。また地積測量図がある場合でも、その内容が間違っている場合もあります。こちらも現状有姿での引き渡しという事で、公簿売買で契約した場合、後からトラブルになることもあります。

公簿売買は実際に面積が違っていても原則としてそのまま、という契約内容ですが、その差があまりにも大きすぎる場合には問題になります。

基本的に公簿売買は、測定誤差の範囲内で収まる分を想定しており、実際に想定の建物が建たないくらい面積が違う場合には、やはり損害賠償などが発生するケースがあります。

どのくらいまでが誤差の範囲と認められるかは微妙なところですが、最初から明らかに違うと思われるのに、それを告げず、または気づかずに公簿売買で取引を行い、その後クレームになるというケースは良く聞きます。

他にもトラブルになる色々なケースがあります。その事例については細論でお話ししたいと思いますが、あまり簡単に考えているとこういったトラブルに巻き込まれるということを覚えておいてください。

トラブルを防ぐ1番有効な方法はきちんとした不動産会社を選ぶことです

先程建物の問題については、4つの対策を提案しましたが、土地については基本的に対策は1つしかありません。それはきちんとした不動産会社に売却を依頼するということです。

不動産の売却ではブローカー的な会社も結構多く存在し、ほとんど現地を見ることなく、金額提示をしてくる会社もあります。しかしいざ問題が起きた場合は、そのような会社は特に何も対応してくれず、もちろん責任を取ることはありません。

きちんとした不動産会社であれば、土地・建物どちらに対してもきちんとした調査とその報告がしっかりとしています。そのため、後からトラブルに巻き込まれる可能性が低く、結果として安全な取引を行うことができます。

相手が安全な会社であるかどうかの判断は多少難しいところはありますが、売却前にどのような内容について調べるのか、その調査内容の報告書式などについて聞いてみると分かりやすいのではないかと思います。

特に書式がない会社では、どのような調査をするかは行き当たりばったりになっている可能性が高いと思われます。書式がある場合は、その書式に沿って調査をしますので漏れの可能性が低いと考えられます。
取引する会社が少し不安と思われる場合には、ぜひ調査内容の書式を見せてもらってください。

ふくろう不動産ではチェックシートを使い、瑕疵がありそうな箇所を事前にチェックします

ちなみに当社:ふくろう不動産は買い手のためのサービスが中心ですが、売主さんに対しても同様の書式を用意し、内容について説明しています。どういった書式を使っているかは、
09節.土地の事前チェックの内容
10節.土地の現地調査シートの内容
11節.戸建住宅の事前チェックシートの内容
12節.戸建住宅の現地チェックシートの内容
13節.マンションのチェックシートの内容
の内容をご覧ください。
実際にはこのシート以外にも、隣接地の測量図や所有者一覧なども合わせて用意し、お客様に調査内容を説明しています。

また建物検査(インスペクション)を受けるとさらに詳しく建物チェックができます。参考までにふくろう不動産のインスペクションの報告書式もご参照ください。「6-04.戸建住宅のインスペクション内容を報告書からご確認ください」

これで100%危険を避けられると言える訳ではありませんが、一般的なトラブルは避けることができると思います。

次のページはこちら 「1項.さまざまなトラブル例で瑕疵担保を学ぶ」(作成中)

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