不動産の売却を考えるときに仲介会社に依頼するサービスに価格査定があります。最近ではネット上で、査定を1社だけでなく、一度に複数の会社に査定依頼できるサービスもあります。
高い査定金額を出してくれる会社は高く売ってくれる、と皆さんはお考えかもしれません。しかし実際には高い査定金額を出したからといって、その会社が高く売ってくれるとは限りません。
査定は機械的に行われますので、計算した数値には差がほとんど出ません
査定金額は人や会社によって若干定義は違うかもしれません。一般的な定義で言いますと、査定金額とは、3ヶ月くらいの販売期間があれば、その不動産が売れるであろうという予想金額のことです。
一般的な査定、例えば自動車の査定であれば、査定額はそのまま買い取り金額になります。ですが不動産の査定金額は単なる予想価格であって、この価格で売れるという保証はまったくありません。まずはこの違いを理解しておきましょう。
査定自体は交通の便や敷地の状況などの内容を評点として計算し、金額に反映させるという作業です。必要項目を入れれば査定を自動計算するソフトも販売されており、そのソフトを使う不動産会社も結構あります。
大手の会社では人数が多いせいか、人によるバラツキを減らすために、システムを導入している会社が多いようです。
このように機械的に計算する場合は、入力に必要な情報をどれだけ把握していて入力できるかだけが問題になります。机上査定では知ることができる情報に限りがあるため、入力できる項目が少なく、ある程度の概算となります。現地査定ではさらに詳しい情報を手に入れることができますので、入力項目が多くなり、より精度の高い査定が可能になります。
では実際に査定額に差が出るのはなぜなのでしょうか
機械的に査定を行っているのであればどの会社に査定依頼を行っても同じような金額が出てきそうですが、実際に複数の会社に査定を依頼すると結構大きな金額差が出ます。金額に差が出る理由には大きく分けて2つあります。
1つは、査定をした不動産会社が本来知らなければならない理由を知らなかったために、計算しなければならない評点が入っておらず、金額が高くなったり低くなったりする場合です。机上査定などでは正確な調査が行われていませんので、現地をよく知っている不動産会社とあまり詳しくない不動産会社ではこういった差が出ることがあります。
もう1つの理由は、営業方針による査定金額の差です。その物件の媒介契約を取りたいと考えている会社は高めの査定金額を付ける傾向にあります。また売れない場合は8掛けで買い取ります、と買い取り保証などを行っている会社は低めの査定金額を付ける傾向にあります。
買い取り保証を行う会社の査定金額が低くなるのは当然でしょう。最終的に自社が買い取る可能性を考えれば当然安く買いたいはずですので、不用意に高い金額を付けてしまい、後から高値で買わなければならないというリスクは抑えたいと考えるからです。
かと言ってあまりにも低い査定金額を出してしまいますと、お客さまが振り向いてくれない可能性が高くなりますので、バランスを考えながら金額設定をしていると思われます。
予想金額である査定が高いからと言って、高く売る能力がある訳ではありません
最近ではサイト上で、複数の会社に一括査定を依頼できるシステムも増えてきました。3社や5社へ同時に査定依頼できるシステムですので項目の入力が1回で済み、手間もかかりません。各社各々が金額を付けてくるので、比較することで大体どのくらいの金額が相場なのかの目安を立てることができます。
しかし一方で、先日このシステムを利用した知人は、しつこい営業がしょっちゅう掛かってくる、と不満を言っていました。どの一括査定のシステムも同じかどうかは分かりませんが、確かに営業を強く受けるリスクはありそうです。
では、どの会社に頼もうかと考えた時には、1番高い査定金額を付けた会社に頼めば良いのでしょうか。私は高い査定金額を付けた不動産会社に不動産売却を頼む事を正解だとは思っていません。
先にお話ししましたように、媒介契約を取りたいが故に高い査定金額を付ける会社もあります。査定金額はあくまでも予想価格です。査定金額は営業的な要素が入った予想価格ですので、その金額だけで判断するのはお勧めしません。高い査定金額を付けた会社が、不動産を高く販売できる能力を持っていると保証する訳ではないからです。
高い査定価格を付けたが故に、不動産会社も勢いで高い売り出し価格を付けざるを得ず、そのために販売に時間がかかり、値下げを繰り返し、最終的には安い価格で成約するということもあります。
不動産会社や営業マンによっては確信犯的にそのように進める人もいます。当初はとにかく高い査定金額で媒介契約までこぎつけ、後は売り出し状況を見つつ、値段を下げて本来の価格に戻していくというやり方です。
ですので査定価格の高さだけで、売却を依頼する不動産会社を決めるのはあまりお勧めしません。査定金額だけではどういった不動産会社なのかの判断ができないからです。一括査定などを行った時は、査定金額だけではなく、むしろ他の要素を見てどの会社に依頼するかを決めるべきだと私は考えています。
査定の内容を丁寧に教えてくれる会社はお勧めできます
他の要素とは、どうしてその査定金額になったのか、今後のどのような形で販売活動をするのか、といったところです。査定の内容を丁寧に教えてくれる会社はお勧めです。
査定内容を説明するには近隣事例の成約価格などを説明しなければなりません。成約事例はレインズという不動産会社のみ見ることができるシステムで確認できるもので、一般の方は知ることができません。この成約事例を教えてもらい、売主さんが売りたい不動産との比較で金額を説明してくれる会社であれば、まずは安心できます。
同じ成約事例を見ても対象物件の査定価格は異なります。そこで、成約事例と比較して、対象物件をどのように見てその査定価格になったのかを聞くことで、その会社がどういう点をプラスに、またはマイナスに見ているかを判断することができます。
例えば時点修正です。1年前に成約事例があったとして、そこから1年経過しているので古くなった分いくらのマイナスです、という説明で終わるのか、古くなっていますが他の事例を見るとあまり下がっていないのでこの金額になります、ですとか同じ事例からの判断でも査定結果が大きく違ってきます。どちらの判断が正しいのかは簡単には分かりませんが、少なくてもどのような考え方で査定しているかが分かります。
また実際に売る際にはその不動産のメリットを大きくアピールしてもらわないといけません。この査定の考え方を聞くことで、査定した会社がどの部分をメリットと考えているかを聞ければ、その後の売り方も予想しやすくなります。
成約事例を聞くと同時に、その会社の考え方を聞くことが重要です
また、査定自体は成約事例などから判断しますが、過去の売り物件だけでなく、その時点での他の売り物件との比較もしているかどうかも確認しておきたいところです。
成約事例から理論上正しい査定価格が出ていたとしても、周辺物件が割安で販売されていれば、購入者はその感覚に引きずられます。逆に割高の場合も影響を受けます。
更に影響を受けるのは周辺事例が無い場合です。同じような売り出し物件が無い場合、多少割高な価格でも比較ができないため、割高だと思われず、成約に至るケースもあります。販売に強い会社ですと、そういった売り物件の状況もよく把握していますし、それに合ったアドバイスもしてくれます。
ですので査定してくれた不動産会社と話をする際には、査定金額そのものを聞くというよりも、どのような会社なのかを判断するために話を聞くと考えた方が良いと思います。
さらにどのような売り方をしていくのかを聞くことも重要です。どのような媒体に広告を出すのか、更には他社の広告掲載を認めるのかどうかも確認しておいた方が良いと思います。考え方としては、他社の広告掲載を認めない会社には頼まない方が良いと思います。
媒介契約を締結した場合、不動産会社は定期的に売主さんに報告書を提出しますが、当初聞いていた広告内容と違っていれば、その点を不動産会社に指摘し、幅広く営業を行ってもらうよう、改めて指示することができます。報告書のサンプルも事前に見せてもらうと良いと思います。
この記事の一部を動画で公開しました
この記事でお話ししました査定についての話を動画でも説明してみました。その動画がこちらです。
よろしければ、動画もご確認ください。
ふくろう不動産の営業方針はこのようになっています
ふくろう不動産は「お客様が知らずに損することがないように」をモットーにしています。ですので自社のお客様にはできる限り色々な情報をお話しし、判断してもらうようにしています。売却については当社は専門ではありません。が、実際に売却を依頼されることもあり、時間やタイミングが合えばお受けしています。
当社は原則として両手取引を行わないようにしていますので、売却のための広告はなるべく多くの不動産会社に出して欲しいと考えています。ですので他の会社から広告掲載の依頼があった場合に、断ったことは今までにありません。
また査定については当社もシステムを導入しています。どういう理由でこの価格になったかについても、詳しく説明しています。
より詳しく知りたい方や、当社に売却を依頼してもよいとお考えの方は、当社まで直接ご連絡をお願いいたします。ただし、ご依頼のタイミングやエリアによっては売却依頼をお受けできないこともありますので、その点のみあらかじめご了承ください。
またメールでのご相談を無料にて承っています。この査定について知りたいですとか、他にも不動産や土地・建物について知りたい事、疑問に思うことがありましたら、お問い合わせフォームからご質問ください。ご質問やお問い合わせは匿名でも受け付けています。またお問い合わせを受けたからといって、当社からしつこい営業を行うことは一切ありません(「第3章.ふくろう不動産は嫌がられる営業を行いません」参照)。ですので、分からないことがある場合には、お気軽にお問い合わせください。