低周波音の問題が少しずつ分かってきました

ふくろう不動産では土地や戸建住宅、マンションを購入する人が、その人の健康に問題を与えない物件であるかどうかを確認するために、電磁波やホルムアルデヒドの調査などを行っています。
「2-02.私たちは知らないうちに強い電磁波を浴びています」
「2-04.ホルムアルデヒド検知器で有害物質の有無を確認します」
「2-07.放射能測定器で危険な土地は避けます」参照

ただ、騒音対策の1つである低周波音については特に調査や確認などをしてきませんでした。しかし、最近他の方のアドバイスなどもあり、低周波音についても事前に調べる方が良いのではないかと思い始めました。

ただ、この低周波音に対する知識が私にはほとんど無かったため、少しずつ勉強し、調べた後に検査機器などを購入しチェックできる体制を整えようと思っています。このページではとりあえず現時点で分かった内容を自分の備忘録代わりに記載します。ただ、これを読む方にも何らかの参考になればと思います。

低周波音とはどのようなものかを理解しましょう

低周波音の内容

低周波音には人が聞こえる範囲と聞こえない範囲が混ざっているようです。
出典:消費者庁

そもそも音というのは空気などの振動音です。しかしすべての振動の音が聞こえるということではありません。人の耳に聞こえる音は、その周波数が一定の範囲に限られるようです。

聞こえる範囲は人によって違うようですが、一般的には20Hz(ヘルツ)から20,000Hzの間のようです、そして低周波音は100Hz以下を指します。ただ人の耳では20Hz以下の音は聞こえませんので、
0~20Hzの聞こえない音、と
20Hz~100Hzの聞こえる音
の、両方をまとめて低周波音と呼ぶようです。

聞こえない音は問題ない、ということでも無いようです

レコードプレーヤー

高周波音では耳には聞こえなくても、脳には何かしらの影響を与えているようです。低周波音が影響が無いとは言えないのではないでしょうか。

20Hz以下の音は聞こえない音なので、人には関係無い、と思われた方も多いのではないでしょうか。でもどうやらそうでも無さそうです。これを逆の事例、高周波音の例から考えたいと思います。

音楽に詳しい人であれば、CDから流れる音楽とレコードから流れる音楽は違う、レコードの方が音質が良い、という話を聞いたことはありませんか。以前は都市伝説のように言われていたこの意見も、最近の調査では正しいらしいと言われています。

CDから出る音は、周波数を22,000Hzまでとして、それ以上の高周波の音を消しています。人の耳では20,000Hzまでしか聞こえない訳ですから、これ以上は必要無いということで、切ってしまったようです。レコードでは、この高周波音をカットするということをしていませんので、ある程度は高周波音が残っているようです(音楽を聴く機械などの影響もあるので、正確ではありません。また、楽器の生演奏では楽器にもよりますが、40,000Hzくらいまでの音が出ているという話です。)。

そこで聞こえない音の影響は無いだろうと思われていたのですが、脳波の検査を行うと、本来聞こえないはずの高周波音を聞くと、α波が出たり、脳内の血流量が増えたりと明らかに違う反応を示すそうです。耳では感知できなくても、脳で聞く?ことができるらしいと言われています。

「第1回 「聞こえないのに聞こえる」不思議な音で病をなおす」 参照

これは高周波音の話ですが、このことを考えると、低周波音でも聞こえないから影響が無い、とは言えないと思われます。

まずは「低周波音症候群」の本を読んでみました

そこで図書館で低周波音の状況についての関連本を探し、基本的な内容が分かると思われる本を借りてきました。それが「低周波音症候群 聞こえない騒音の被害を問う」です。

この本から、低周波音被害は色々と難しい問題があるなと感じました。私が問題と感じる点は次の5つです。

1.同じ音でも人によって被害が出る人とでない人がいる
2.聞こえない音による被害のため、説明することが難しい
3.一般の測定器では低周波音を切り捨てで表示するため、実際の音量よりも小さく扱われる
4.通常の防音対策には意味が無いことが多いだけでなく、かえって逆効果になることも多い
5.あてにならない参照値という数値が使われている

これについて、1つ1つ考えてみたいと思います。

同じ音でも低周波音による症状が出る人と出ない人がいます

アレルギーの症状

同じ花粉を浴びても、花粉症の症状が出る人と出ない人がいます。幸い花粉症では、症状が出ない人であっても花粉の存在自体を否定する人はいません。

同じ環境にいて、同じ音を聞いていても症状が出る人と出ない人がいます。これはアレルギーなども同じで、その人の体質などに影響されるようです。ですので、自分は大丈夫なのに、文句を言ってくるこの人はおかしいのではないか、と変に誤解をされることが多いようです。

シックハウス症候群が問題になった当初も同じ状況でした。医者に行っても原因が分からず、しまいには気のせいだ、と言われた例も当時は多かったと聞きます。シックハウスは問題を訴える人があまりにも増えたために、原因も調べられ2003年に法律で規制されました。しかし低周波音については恐らく世間の理解がまだまだ足りないのではないかと思います。

聞こえないもの、見えないものの説明は本当に難しいです

聞こえないイメージ

一般の人に聞こえない音のダメージをどう説明するかは難しいものです。

通常の騒音であれば、誰もが聞こえますので、この音は大きい、小さいなどそれなりに判断がつきます。しかし聞こえない低周波音であるために、症状が出ない人が問題を理解するのは難しいと思います。聞こえない人は、症状が出ている人に対し、やはり気のせいだと思ってしまうのでしょう。これもシックハウス症候群の時と同じです。見えないものや聞こえないものについては、自分自身に症状が出ない限り、感覚的に理解するのが難しいようです。

一般の測定器で計測できないことがさらに誤解を大きくしているようです

騒音計写真

一般的な騒音計では、低周波音を正しく計測することはできません。

聞こえないという問題をさらに大きくしているのが計測器です。一般の計測器では低周波音を正しく測ることができません。

一般の騒音計測機でも30Hz位の周波数の音も測れることになっています。この騒音計で目安として音を測った場合、音量は実際の音よりも小さく表示されます。それは低周波の音は人の耳に聞こえにくいので、実際の音よりも数値を補正して出す設定になっているからです(A特性音圧レベルと言われています)。例えば50Hzの音であれば、30デシベル下げて表示するということになっています。

測定器を使う人が、このような内容を知らないまま使うと、本当は大きな音なのに、大きくないと判断しかねません。その結果、計測しましたが問題ありませんでした、という間違った報告が出る危険性があるようです。

ちなみにヒートポンプ給湯機の運転音もこのA特性で調べた数値を記載することになっているようです。ですので、カタログなどに記載されている音の数値は低周波音を正確に計測した訳ではありません。

ヒートポンプ給湯機のガイド

出典:消費者庁

通常の防音対策は効果がないどころか逆効果となるケースも多いようです

防音のイメージ

一般的な防音工事では低周波音を防ぐのは難しいようです。

騒音の発生源となる機械にカバーを付けることで多少なりとも効果があるものだと思っていましたが、低周波音については効果は無いケースが多いようです。耳に聞こえる通常の音は確かに小さくなるのですが、低周波音はカバーなどではあまり下がらないようです。それどころか、マスキング効果(他の音が入ることで低周波音が聞こえにくくなる)が薄れるせいで、かえって被害が大きくなる事例もあるようです。

エコキュートの周りに付けるカバーなども売られていますが、低周波音にも効果があるのかどうかは、計測してみないと分からないということかもしれません。

 環境省設定の参照値はまったくあてになりません

この本では、環境省が定めた騒音の参照値の基準を守っている機械であっても、騒音による病気の症状が出る人が多くいる、と書かれています。ちなみにこの参照値は消費者庁の報告書によると「一般成人の90%が寝室で許容できる低周波音の音圧レベル」となっていました。逆に言えば10人に1人は許容できないレベルということです。
(「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動により不眠等の健康症状が発生したとの申出事案 報告書本文より 出典:消費者庁」参照)
(あるいはこの90%と言うのは統計学で言う有意水準のことかもしれません。ただ通常の有意水準は95%や98%で考えますので、もし有意水準なのであれば、なぜ90%設定なのかが疑問に残るところです)

どういう背景でこの参照値が設定されたのかは分かりませんが、1割の人に問題が出るレベルでOKとする数値は、さすがに問題なのではないかと思います。

分かりにくい問題ですので、解決も難しそうです

この低周波音問題は調べていけばいく程、やっかいな問題だと思わされます。
この状況の中で、不動産仲介業者である私ができることは本当に限られると思います。とりあえずは、

1.正しい情報を自分のお客様も含めた多くの人に知ってもらう
2.正しく低周波音が計測できる機器を揃え、購入予定のお客様に低周波音の数値を説明する
の2点ではないかと思いました。

低周波音問題については、周りに理解してくれる人は少なそうですし、国も問題が無いレベルでの基準を設定している訳では無さそうです。そうなると後は自分で気を付ける以外方法がありません。

このあたり、もう少し情報を集め、整理した後に対策を立てたいと思います。このページの内容で間違いや勘違いがあり、その内容に気が付いた方がいらっしゃいましたら、恐れ入りますが教えて頂けますよう、よろしくお願いします。

連絡はお問い合わせフォームからご連絡いただくか、
e-mail)hnakagawa@296fd.co.jp
で、直接メールをお送りください。

現在当社でも低周波音を計測できる機種を購入し、測定サービスも行っています。その内容については「6-01.健康に住めるための建物検査を行っています」のページをご確認ください。

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